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2023.09.15

なぜなお「推し活」なのか!?人生100年時代のその意義とは…

~ファンタイプ“推し層”と“好き層”の違いから探る~

はじめに

「推し活していますか?」筆者の日常でも“推し”がいるか聞かれる昨今となりましたが、みなさんの周りではいかがでしょうか。

今回は「推し活」の実態を明らかにすることで、なぜなお「推し活」はブームに終わらないのか、人生100年時代のその意義を探っていきたいと思います。

「推し活」の実施度は意外と低い!?

まず、「推し活」について現在の実施度を聞いてみると…

「推し活をしている」 =“推し層”は15.9%、「推し活ではないが、好きな対象がいる」=“好き層”は42.6%、「推し活をしていないし、好きな対象もいない」=“ファン無層”は41.5%ということが分かりました。「推し活」の実施度は、相対的に見ると低いというのは意外かもしれません。

【推し活の実施度】

「推し活」で「100年生きたい意欲」は変わる!?

では、“推し層”と“好き層”の「ファン有層」と、「ファン無層」の違いは、私たちの人生にどう影響するのでしょうか。そのひとつのヒントとして、人生100年時代において「100歳まで生きたいか」という問いへの答えに違いが出るのかを聞いてみると…

①“推し層”>②“好き層”>③“ファン無層”の順で、「100年生きたい意欲」が高い結果となりました。何かしらの「ファン有層」のうち、単に“好き”なだけよりも“推し”がいるほうが、人生100年時代を生き抜く力を、高める可能性があるのかもしれません。

【100年生きたい意欲】

ファンタイプ“推し層”と“好き層”の違いとは!?

では、この「ファン有層」の“推し層”と“好き層”について、その行動のどこに違いがあるのかを見ていくと…

まず、“推し層”は「周囲に、対象がいることを公言している」人が約8割と高く、他者に対し「推し活宣言」するという、開いた層であることが分かりました。

【対象の周囲への公言有無】

さらに詳しく、「対象についての行動」を見ていくと…

全体に“推し層”のポイントが高い傾向にあり、“好き層”との差が20ポイント以上、なかには36ポイント以上の行動が見られました。総じて、“推し層”が「①対象に関連した購買力」「②対象への接近力」「③他者との情報流通力」を持っていることが分かります。

また、その行動を「誰との間で行える行動か」で捉えてみると…

“好き層”が自分のみで行える「①自分内行動」が特徴的であるのに対し、“推し層”はそればかりでなく、対象により近づき行える「②対象間行動」、周囲や仲間と行える「③他者間行動」が特徴的で、自分を飛び越えて、より多面的な行動をとっていることが分かります。先の“推し層”の「推し活宣言」も、周囲や仲間への「他者間行動」をとっているといえるでしょう。

【対象についての行動】

「推し活」は「ウェルビーイング」を引き上げる!?

さらに、それぞれに「対象から得られたこと」=メリットを聞いてみると…

“推し層”は特に「精神的メリット」の項目ポイントが高い上に、「社会的メリット」「身体的メリット」の項目の順でも全体にポイントが高くなっており、「推し活」は多面的に満たされた状態に近づけるドライバー力があるといえます。

これは、WHOが述べているように、「ウェルビーイング」が「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」を指すことからも、「推し活」することは、単に対象が“好き”なだけよりも「ウェルビーイング」が高まっている状態といえるのかもしれません。

【対象から得られたこと】

さらに、“推し層”に「対象がいることで最も幸せを感じる瞬間」について自由回答で聞いてみても…

「精神的メリット」ばかりではなく「身体的メリット」「社会的メリット」についての声が上ることから、「推し活」は、やはり「ウェルビーイング」の要素を多面的に引き上げる力があるといえそうです。

【対象がいることで最も幸せを感じる瞬間(推し層)】

<精神的メリット>

  • コンサートで生歌を身体に浴びると癒されること。そのミュージシャンを知ったことで、周辺のミュージシャンのことを知ったり、世界が広がり人生が豊かになった。(50代)

  • なかなか取れないチケットが取れてあちこち遠征して知らない土地をたずね、アーティストの曲を聴き元気になれた時にとても幸せを感じ、感謝の気持ちがあふれて、周りにも自分にもより優しくなろうと思える。(50代)

<身体的メリット>

  • 何かに興味持ち活動的に動き、心豊かになれることが幸せです。(40代)

  • 行動的にも知的にも世界が広がりました。また、過去の推し活した経験が、苦しい時にも今も頑張る力になる。(60代)

<社会的メリット>

  • 推し活するためにイベントに出かけてそこでまた色々な出会いが増えたり物を交換したりできる。(30代)

  • 家族にも推し活を認めてもらえており一緒にBlu-rayを鑑賞したり、観劇に行ってくれたりすること。贔屓が健康で元気であれば嬉しいですし、素敵な舞台で感激できたり、舞台のために時間を作って、楽しみにしているその時間が幸せです。(40代)

なぜなお「推し活」なのか!?人生100年時代のその意義とは…

なぜなお「推し活」はブームに終わらないのか。それは「推し活」によって、精神的、身体的、社会的に満たされた状態=「ウェルビーイング」を得られることにあるのかもしれません。

人生100年時代、いつ、どこで、どのような出会いが訪れるかは未知数です。現在“推し”がいなくても、ある日突然、心を奪われるような対象と運命的に出会う可能性もあるのです。そんな時、「ウェルビーイング」に繋がる「推し活」が、それぞれの人生をより豊かに支える力になることを、思い出して頂けたら幸いです。

【調査概要】

■調査名:人生100年時代のファンとは?

■調査対象者:100年生活者研究所LINE会員 20~80代 男女861名

■調査手法:LINEによるアンケート調査

■調査期間:2023年7月

プロフィール
研究員
髙橋 薫
広告会社においてマーケティング職、営業職、管理部門職に従事。
社会は様々な立場の人が支え合っていると日々感じる体験からも、
人生100年時代どうしたらそれぞれポジティブに生きていけるか…
「多様多幸」に生きるヒントを探究していきます。