「MZ世代」とはミレニアム世代とZ世代を組み合わせた韓国独特の世代分類。
環境問題への関心が高いMZ世代のニーズが企業を動かし、韓国社会全体へも波及している。
韓国のMZ世代の間で生まれた、自分を大切にする生き方の進化系が「갓생(ガッサン)」。
大韓民国
面積 約10万平方キロメートル(日本の約4分の1)
人口 約5,163万人(2022年時点)
首都 ソウル
言語 韓国語
主要産業 電気・電子機器、自動車、鉄鋼、石油化学、造船
GDP 1兆7,978億ドル(2021年、韓国銀行)
通貨 ウォン
(外務省による基本データより抜粋)
MZ世代とは「ミレニアム世代」と「Z世代」を組み合わせた韓国独特の世代分類で、その数は韓国総人口の3割を超えます。
そして今や韓国の文化、消費をけん引するMZ世代。そのキーワードは「私らしく」です。2019年に発刊されたエッセイ『私は私のままで生きることにした』(キム・スヒョン著)が若者世代を中心に113万部のロングセラーになるなど、自分の価値観に重きをおいた生き方に強い関心が集まっているのです。
このような傾向は消費全般にまで広まっており、大韓商工会議所は、MZ世代が商品を選ぶ際に価格に対する心の満足度「가심비(カシムビ)」や、自身の信念を消費に反映させる「ミーニングアウト」などを重要視していると分析。特にMZ世代は環境問題への関心が高く、リサイクルやエコといった分野でミーニングアウトを実践する動きが活発化しています。たとえば、浪費や無駄をなくしてごみを生み出さないという考え方「ゼロ・ウェイスト」を追及する韓国初のライフスタイルショップ、ザ・ピッカーが2016年にオープン、その後、同分野の店舗は韓国内に120以上も誕生しました。また、消防士の廃防火服から衣類やバッグを製作し、その利益を社会貢献にあてるブランド、119レオは2018年の創業以来多くの人々から共感を集めています。
さらに韓国の消費に大きな影響力を持つMZ世代のニーズを見込んで、大手企業も続々と進出します。2021年に化粧品大手のLG生活健康が環境や取引の公正性などに配慮した製品の研究開発を行う研究所を韓国で初めて設立したほか、2022年には通販大手のCJオンスタイルが梱包用のビニールテープを廃止するなど、そのトレンドはMZ世代を中心に韓国社会全体へも波及しています。
自分を大切に生きるMZ世代に生まれた最新のライフスタイル、それが「갓생(ガッサン)」。ガッサンとは、MZ世代が生み出した造語の1つで、「遠い成功ではなく現在をより良くすることに集中し、小さな目標を着実に達成していく」ような、他人の模範となる生き方のことを指します。2020年上半期に登場したガッサンが浸透した背景にはコロナ禍があり、MZ世代は不確かな世界の中で少しずつ物事を達成することに満足感を得ているといいます。
ガッサンの流行により、様々なオンラインサービスも盛り上がっています。
ホワイトキューブ社が開発した健康習慣アプリ「challengers」では、アプリ内で「週3回運動をする」「毎日読書をする」といった目標を設定するとともに、お金を預け、目標を85%以上達成できれば全額返金(未達だと減額)、100%達成すると追加で賞金が支払われるというユニークな試みで会員数1000万人を突破しました。
また、同様に自己成長を目指すプラットフォーム「meet me」では有料でヨガや瞑想などのルーティンを提供するだけでなく、プログラムごとにメンターを配置するなど、ガッサンの実現に重要な伴走者を用意することで意欲を維持する取り組みに力を入れます。
さらにガッサンの流行を受けて、韓国最大級の教育プラットフォームから、ビジネス分野からクリエイティブ分野までの約4000講座を定額で聴くことができる「CLASS101+」が登場しました。自己啓発意欲の高いMZ世代をメインターゲットに据えた新たな試みです。
このように、「私らしく」そして「日々のルーティンでより良く」生きていきたいというMZ世代の願いや行動は、今や韓国社会全体のウェルビーイングをリードするものとして存在感を増しつつあるのです。韓国のトレンドが日本でもブームになる昨今、自分の価値観に重きをおいた韓国のMZ世代の生き方も、自分自身のウェルビーイングに取り入れてみてはいかがでしょうか。
画像素材:PIXTA