2023.03.17

テクノロジーが変える!新しい農業との関係とウェルビーイングな未来とは

「食」を通じてウェルビーイングを考える
「都会を離れて緑豊かな環境で暮らしたい」、「家庭菜園で野菜を育てたい」といった〈農的暮らし〉への関心が高まる一方、いざ職業として考えると高齢化や後継者などの課題がつきまとうのも農業の現実。

こうした課題を解決するには、農業に従事しながら、「いかに自分らしい生き方を目指せるか」、「新しい働き方をどう導入していくか」がポイントとなりそうです。そこで注目を集めているのが「アグリテック」です。農業とテクノロジーを掛け合わせる新しい農業のカタチ。ウェルビーイングの観点から考えてみました。

要約すると

  • アグリテックが「無理をしない農業」、「がまんしない農業」のカギ

  • 気軽に農業に参加できる「ニュー農マル」「農ケーション」などの取り組みに注目

  • 「食」について考え、行動することがウェルビーイングにつながる

「アグリテック」は、どのように生産性を向上させるのか 

「アグリテック」はAgriculture(農業:アグリカルチャー)とTechnology(技術:テクノロジー)を組み合わせた造語。主には、農業領域で活用されるAIやロボットなどを指します。例えば、熟練の技術が必要とされる農作業をアグリテックに置き換えることで、「誰でも・簡単に・高品質な生産」が可能になると期待されています。 

農林水産省も、アグリテックの導入を進める「スマート農業実証プロジェクト」を2019年度にスタート。このプロジェクトによって、石川県の「金沢農業」は、有機大豆の畑に除草ロボットや栽培経営管理システムを導入しました。ICT活用によって、作業効率、収穫効率を数値化するとともに、労働時間の削減と収穫量の300%アップに成功したそうです。 

また、茨城県のイチゴ農家「つづく農園」では、腰の負担などを軽減する補助ロボット「マッスルスーツEvery(株式会社イノフィス)」を導入。年間130時間におよぶ労働時間と、面積10アール換算で年間13万円の労働費を削減できたそうです。 

農家にとって悩みタネとなるのは、体に負荷のかかる作業。テクノロジーが身体的な負荷を軽減するとともに、コストの無駄も省いてくれるとなれば、安定的な収益化にもつながります。アグリテックは「無理をしない農業」、「がまんしない農業」を創り出すカギを握っているのかもしれません。 

多様なスタイルで農業に参加する「ニュー農マル」と「農ケーション」

ICTを活用することで、さまざまな背景を持つ人を農業に巻き込む取り組みも生まれ始めています。 

その一つが農地所有適格法人鎌倉リーフ(神奈川県鎌倉市)による「ニュー農マル」プロジェクト。地元農家と、農業に関心がある人、支援したい人をつなぐ「地域支援型農業」で、参加者は人手の足りていない農家を手伝う農作業体験や、定期的な野菜購入など、さまざまな支援方法を選べるというもの。地域として農家を支援し、地域の食や産業を守っていくことを目指しているそうです。 

また、長野県須坂市では、2021年にブドウ農家「岡木農園」と地元の温泉旅館が連携した「農ケーション(農業体験+ワーケーション)」の実証実験が行われました。温泉旅館で「ワーケーション(ワーク+バケーション)」でリモートワークを行いながら、業務時間外に農業体験をしてもらうというもので、大手旅行会社も注目の取り組みだったとか。農家の労働力不足解消と都市部で暮らす人々の心身の健康というお互いのウェルビーイング向上に貢献する、農業の新しいカタチとなるかもしれません。 

「食」について考え、行動することがウェルビーイングにつながる

人が生きていくために欠かせない「食」。そして農業は、私たちの「食」を支える大切な産業の一つです。農林水産省は生産者や食品関連事業者だけでなく、消費者を含むあらゆる人々が考え、議論し、行動する国民運動「ニッポンフードシフト」という取り組みをスタートさせました。 

近年の調査では、「持続可能な社会を目指す行動を意識的に起こす」ことも本人の幸福度にプラスの影響を与えるらしいことが分かってきました。「ニッポンフードシフト」は食育や地産地消について考えることで「持続可能な農業」や「農業分野の課題解決」を目指すものですが、「個人のウェルビーイング」という視点で考えると、こうしたアプローチに共感し積極的に行動することそのものが、私たちのウェルビーイングにとっても大切なのかもしれません。 

画像素材:PIXTA 

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。