2024.03.11

ワーホリで月収80万円、北欧で寿司職人に 海外で働く幸せを探る3冊

毎日忙しく働く中で、「こんなに働いて何になるんだろう」「私の人生ってこれでいいのかな」とふと思ってしまうことはありませんか?

より幸せな労働環境や人生のあり方を求め、海外を選ぶ人たちは少なくありません。ワーキング・ホリデー(ワーホリ)制度の利用や海外企業・支社への就職によって生活拠点を国外に移した人は、自身の環境にどのようなウェルビーイングを見出しているのでしょうか。海外生活の様子を通して「自分にとっての幸せ」と向き合えるルポやエッセイなど3冊を紹介します。

働く国を変えると、生き方が変わった

『安いニッポンからワーホリ!: 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』上阪徹(東洋経済新報社)

記録的な円安や上昇しない国内賃金の問題を背景に、海外で働いてお金を稼ぐ「海外出稼ぎ」を選ぶ若者が増えています。そんな若者たちの姿に迫った『安いニッポンからワーホリ!: 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』。

若者たちの渡航先として人気なのは、オーストラリアやカナダなど日本よりも最低賃金や給料の高い国。例えばオーストラリアの最低賃金は日本円で約2,000円と、日本国内の倍近くになります。18歳以上30歳以下の若者は、留学ビザと同様に勉強しながら就労可能なワーキング・ホリデービザを利用して、現地の仕事を探すのです。

本書では、カフェのアルバイトだけで月収が約40万円になった人や介護アルバイトで月収80万円を稼いだ例などが登場。収入面の良さに注目しつつ、言語や文化の違いによるトラブルにも言及します。

ワーホリ後の進路は、現地で大学に進学する人や就職する人、永住権を得た人までさまざま。新しい場所に行くことでこんなにも人生が変わるのかと驚きとともに、彼らが一番に得たものはお金ではなく、「人生は自分次第で切り拓ける」という自信ではないかと感じます。

働く場所や時間の自由度が上がっている現代だからこそ、改めて「自分はどう生きたいのか」と向き合うきっかけを与えてくれる1冊です。また、ワーホリに興味がありつつ具体的な手立てを知らない人にとっては、その全体像がざっくり掴めるはず。

フィンランドで見つけた、仕事とのちょうどいい距離感

『北欧こじらせ日記 フィンランド1年生編』週末北欧部chika(世界文化社)

より個人にフォーカスした体験談として興味深いのが、2022年にテレビドラマ化された人気シリーズの最新作『北欧こじらせ日記 フィンランド1年生編』。

20歳の時に初めてフィンランドを訪れて以来、北欧の魅力にどんどんハマっていった筆者のchikaさん。フィンランドで暮らすという自身の夢のため、寿司職人として現地就職する目標を戦略的に掲げます。日本で会社員として働きながら週末は寿司学校へ。約3年の修行の末、2022年に寿司職人として就職が決まり、念願のフィンランド移住が実現します。

渡航後は、慣れない環境で部屋探しやレストランでの勤務に追われる日々。仕事にも慣れ、全てが順調に進み始めた……かと思いきや、突然の失業! そんな山あり谷あり人生の筆者が、フィンランドで働く人たちの価値観に触れることで、変化していく人生観を綴るコミックエッセイです。

ワークライフバランスの先進国といわれているフィンランド。本書では現地企業に勤める筆者の上司が「仕事はあくまでも人生の一部。僕にとって一番大切なのは一度しかない自分の人生そのもの」と言い切ります。

どんなにやりがいのある仕事でも、労働環境が悪いとキッパリ辞めたり、自分のやりたいことを優先するために勤務日数を減らしたり。そうした姿からは、「自分は何を大切にするのか」を普段から考え、人生の最優先事項をしっかりと決めている様子が読み取れます。

本書を通して感じるのは、その人自身にとって一番適切な仕事との距離感を見つける重要性。組織と個人を一体化させないヨーロッパの労働観を知ることで、人生をウェルビーイングに生きるヒントが見つかるかもしれません。

アラフォー駐在員がアメリカで学んだ、楽に生きるためのコツ

『底辺駐在員がアメリカで学んだ ギリギリ消耗しない生き方』US生活&旅行(KADOKAWA)

海外生活で自身の幸せを見つけるのは、若者ばかりではありません。『底辺駐在員がアメリカで学んだ ギリギリ消耗しない生き方』の筆者は「アラフォー駐在員」。駐在員ならば高学歴でさぞ英語も得意かと思いきや、筆者が英語の勉強を始めたのは28歳の頃。きっかけはニート生活から抜け出すためだったそう。

現在は、肩の力を抜いた独特な視点語りがクセになるYouTubeチャンネル「US生活&旅行」で海外生活の様子を発信しています。本書でも人生の失敗や挫折を淡々と書いているのが特徴です。

「ギリギリ消耗しない生き方」のコツとして筆者がすすめるのは、同調圧力のない環境を選んで、人間関係による消耗を減らすこと。ネガティブな人間関係を整理することで、ストレスから解放されたり、本当に仲のいい人だけと交流できたりと今よりも充実した時間を過ごすことができます。

こうした生き方のコツ以外にも、物価や家賃の高さ、格差や分断などアメリカが抱えている問題を含め、リアルな現地生活が垣間見れるのがこの本の面白いところ。順風満帆な生活が送れるかと思いきや、筆者はコロナ禍で仕事をクビに。日本と米国どちらで再就職するのか、葛藤のうえ選択したのは......。筆者の価値観に注目です。

人生100年時代、「生きるための仕事」をどこでする?

英語には「生きるために仕事をしろ、仕事のために生きるな」(Work to live, don't live to work)ということわざがあります。「人生100年時代」と言われる今、就業期間は長期化しており、「どこでどのように働くと幸せになれるか」を考えることは、充実した人生にとって非常に大切です。ウェルビーイング実現のためには、海外で働く選択肢を検討してみるのもいいかもしれません。その際はこの3冊の本をぜひ参考にしてみてください。

(執筆:吉野舞/編集:ノオト)

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。