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2024.02.02

キーワードは「結びつけ」「捉え直し」

日々のルーティンワークを豊かな時間に変える工夫

要約すると

  • 「新しいこと・特別なことをしないといけない」と焦る人ほどルーティンワークを効率良くやる意向が強い

  • 逆に全く焦らない人は幸福度が高く、「特別なことをしないといけない」と思うこと自体がストレス

  • 幸福度の高い人は、ルーティンワークにささやかな変化を加え、日常の時間を豊かな時間に繋げている。

ルーティンワークへの向き合い

先日、とある寺の管長のお話を伺う機会があり、とても感銘を受けました。その方の文献を読んで分かったのは、禅の教えには独特なところがあり、日常の仕事をとても大事にしているということ。他の宗派では、食事の準備はまかないの方にやってもらって自分たちは修行に専念するそうですが、禅宗においては、「ご飯を炊く」のも「掃除をする」のも、真心を込めて行うことで自分を高めていく“修行”であるということなんですね。

効率よく日常のルーティンワークを終わらせて、新しいこと・特別なことをしなければ・・、と焦る方も多くいらっしゃいますし、それ自体は素晴らしいことなのですが、一日24時間で考えると、どう頑張っても特別な時間より、日常の時間の方が多いですよね。

そして、同様に100年の人生で考えても、日常の時間の方が多いことになります。

このように考えると、多くなる「日常の時間」にどう向き合っていくかも、100年時代の重要なテーマになるのではと思い、記事を執筆致しました。

焦りを感じる理由は、マンネリ化だけでなく「環境の変化」も

アンケートからまず分かったことは、新しいこと・特別なことをしなければ・・・と焦りがちな方は、ルーティンワークにおいては「効率」に重点を置いているようです。

【焦り度合い別での効率化への意向】

どういう時にそういう焦りを感じるのかを伺うと、マンネリ化を自覚した時、身近な人(特に年上)の新鮮な体験談に触れる時に加え、環境の変化(自身が望んでいない変化)等があるようですね。

  • 誕生日や新年を迎えて、時が過ぎるのを早く感じた時(40代女性)

  • TVなどで自分より年上の人が、新しいことにチャレンジしていることを知った時(50代女性)

  • 友人や子どもが、自分がやってみたいと思いつつ、やったことのないことを経験した話を聞く時(50代女性)

  • 休みの日に、行ったことのない新しい場所に出かけることがほとんどなくなっていることに気づいた時(60代女性)

  • 今まで無縁だった、自治体や年配者との対話等に時間や気持ちを割くことが多くなった時(60代女性)

  • いつもと同じような過ごし方や仕事のやり方をしている時(40代男性)

  • 予定に入れたタスクが、多忙や疲労感でできなかった時(70代男性)

焦りが無い人は幸福度が高い

逆に、新しいこと・特別なことをしようという焦りが無い人も数多くいらっしゃいます。

特徴的なのは、「焦りがまったくない人」の方が幸福度が高いという事実です。

【焦り度合い別の幸福度】

なぜ焦りを感じないかもお伺いしました。

不変であることを幸福と感じる方、焦ると特別なことと出会う新鮮味が無くなるという方もいらっしゃいます。「特別なことをしないといけない」その意識こそがストレスというお声も多く寄せられ、なるほどと思いました。

  • 代わり映えしない日常が、実は一番幸せなのかなとも思う今日この頃です(50代女性)

  • 何か新しいことを必ずしなければならないという必要性を感じないから。その様な事が必要になれば、焦らなくても自然にやると思うから(50代女性)

  • いくつになっても新しいことや特別なことはあり、新鮮な体験になるが、「しないといけない」と捉えてしまったら楽しめないと思うから(50代女性)

  • 年齢的に新たなことに挑戦というよりも、現状の中で小さな発見や進歩があれば良いと考えている(50代女性)

  • 自分の価値観で自分のペースで他人と比較することなく生きていくほうが幸せな生き方だと思うから(50代男性)

  • 「しなければならない」とストレスがかかるのが負担になるから(60代男性)

自身を高めるルーティンの「結びつけ」「捉え直し」

日々のルーティンとどう向き合っているかも質問し、幸福度の高い方(8~10点)と、幸福度が低めの方(0~7点)の差を見てみました。

すると、幸福度の高い方は、「忙殺されないように意識する」「学びと成長の機会と捉える」「ご褒美を用意する」「自身の得意分野と結びつける」など、ルーティンを行う時に、いろいろな工夫をしている方が、より多いことがわかりました。

【ルーティンワークへの向き合い方の幸福度別の差】

「日々のルーティンワークを楽しむためのあなたの工夫をぜひ教えてください!」と自由回答を募ったところ、何気ないことを仕事や興味のあることと「結びつける」エピソードや、辛い・面倒なことをポジティブに学び・成長の機会として「捉え直す」エピソード等、たくさんの具体的なアイデアを頂きました。

「結びつけ」のエピソード

  • ATMへ行く際、仕事帰りなどに焦って寄っていたのをやめて、休みの日など散歩がてら寄ることに変えてみた。そうするとゆとりを持てて、普段とは違うルートでゆったり歩いてみたりと、楽しみに変えることができた(30代女性)

  • 子供との会話を、より良い聴き方・話し方になるよう仕事の課題と重ねて練習した(40代女性)

  • 老親に会いに行くのに車で片道1時間以上かかるが、社会と交わる用事を入れたり、道中好きな音楽を沢山聞いたりする自分時間にしている(50代女性)

  • 主人のリハビリに、ウォーキングを一緒にする様になりました。毎日ここまで歩けたね、景色が綺麗だねと、夫婦の会話もふえました。あんなに何度もダイエットに失敗して来たのに、嘘の様に痩せるのです。肥満体から普通の体型に戻るのを楽しみに、毎日続けていきます(50代女性)

  • 嫌いな玄関周りの掃除を、育てている植物や虫の観察を楽しみにしながら、また人との会話に繋がるように工夫している(50代女性)

  • 仕事や育児など、どうしても対人だと自分の思い通りに行かないことも多いので「怒らない」を目標にポイント制にして100ポイント貯まったらご褒美としてスイーツを食べたり、自分で自分の機嫌を取る。「怒らない」を意識するだけで感謝や長所にも目が行くようになった。(30代女性)

「捉え直し」のエピソード

  • 父の介護をしながら働くのはしんどいが、父のお世話ができるのもあと少しだと思うと、貴重な時間と体験だと考え、しんどくても精一杯やろうと前向きな発想に変えるように心がけている(50代女性)

  • 掃除や片付けも丁寧にやると満足感がある、愛着がわく、楽しみながらやれる。やらなければいけない、早くやらねば、と追われる気持ちになる必要はない。「丁寧に暮らしたい」という気持ちで物事に対すると誰かと比べることもないし、日々の充足感と精神の安定を得られるようになった(50代女性)

  • 料理はあまり好きではないが片付けは好きなので、「冷蔵庫を片付ける」と考えて早目に使いたい材料などでメニューを考え料理を作りスッキリする(50代女性)

  • 嫌いだった料理も、レシピを見て分量を計って作るようにし、家事も科学の延長ととらえるようにしたら面白い瞬間が増えた(50代女性)

  • 職場で、面倒臭いことを他の誰もやらなくて押し付けられた時、そのタスクによって、自分が人として成長していると意識してやっている(60代女性)

  • 育児(子供との時間)に対して、以前は完璧を求めてしまって自分を追い込んでいましたが、今は考え方を柔軟にして、”今しかない子供からのプレゼント”だと思って、どんな瞬間も子供との時間を楽しむようになることが出来ました!(40代男性)

おわりに

私自身も、小学生の息子が在籍しているサッカーチームのお父さんコーチを1年前から務めているのですが、未経験故に「サッカー苦手。急に上達なんてできない。特別なことをしないといけない」と、引き受けた当初焦っていたのです。

しかし、仕事柄議事録をまとめるのは得意だったので、指導内容を後日まとめてHPで共有すると、「子供がどういう練習をしているのかよく分かった」「振り返りに役立つ」とご父兄・選手に喜んでもらえたのです。焦らずに自身のやれるところから始めて、そのプロセスで成長していく選手達を教師として、私自身の学びにもなっています。

ルーティンワークの効率化も素晴らしいことですが、最も大事なことは、「特別なことをしないといけない」という執着を取り払い、今行っている1つ1つの価値を見つめ直し、今できる変化を探すことで、日常の時間を充実した時間に繋げていくことではないでしょうか。

【調査概要】

■調査名:「ルーティンワークについて」についての調査

■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員 20-80代男女 628名

■調査手法:LINEによるアンケート調査

■調査期間:2023年12月

プロフィール
研究員
中間 陽介
2005年大広入社。祖父母の優しさと包容力と、少し寂しげな姿を今も思い浮かべます。