2024.01.09

自分が幸せじゃないと、会社はウェルビーイングになれない?

〜自分がウェルビーイングな状態になるために必要なコト〜
2023年11月6日(月)、ウェルビーイング・アワード参加企業を対象にしたイベント「Well-being Table」が開催されました。第2回となる今回のテーマは「ウェルビーイングなオフィス・働き方とは?~時間と場所に縛られない、自分らしく働ける仕組みづくり~」。ウェルビーイングな働き方について4名の登壇者によるプレゼンテーションが実施され、参加者の多くが共感を得たイベントとなりました。

4名の登壇者に共通していたことは、「自らが幸せにならないと、ウェルビーイングな働き方はできない」ということ。この記事では、これからの会社、そして社会に必要なウェルビーイングな考え方、取り組みのコツをご紹介します。

要約すると

  • ・ウェルビーイングの事例をまねることから始めよう

  • ・会社のウェルビーイングを考える前に自分が幸せになろう

  • ・「Good and New」を取り入れて心理的安全性のあるチームになろう

良い事例はたくさんある! 失敗を恐れずまねることから始めよう

イベントには、株式会社YeeY共同創業者・代表取締役 島田由香さん、三井不動産株式会社 ワークスタイリンググループ グループ長 岡村英司さん、丸井グループ CWO(Chief Well-being Officer) 小島玲子さん、読売広告社 都市生活研究所/iBASHOレポート編集長 藤田剛士さんの4名が登壇しました。

写真左からYeeYの島田由香さん、三井不動産の岡村英司さん、丸井グループの小島玲子さん、iBASHOレポートの藤田剛士さん

そもそもウェルビーイングとは、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態を示す言葉。1947年に採択されたWHO(世界保健機関)の憲章前文で定義されており、70年以上前から使われているものです。世界的には当たり前となってきているウェルビーイングの考え方ですが、なぜ、日本ではその考え方が広がらないのでしょうか?

イベントが開催された「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」を運営する三井不動産の岡村さんは「現代は“働きやすさ”が向上する一方で、“働きがい”がおざなりになっている」と指摘。ウェルビーイングな働き方を加速できない背景には、「失敗してはいけない」という心理が働いていると語ります。

「日本人は真面目なので、ウェルビーイングについても、何かしらの成果を出さなければならないと思うあまりに、なかなか踏み出せないところに課題があると思います。難しく考えず、まずはやってみる。良いなと思ったことをまねするだけでも、ウェルビーイングな働き方になっていくはずです」

何から始めたら良いか悩んでいる方は、「いいな」と思った企業の取り組みをまねすることから始めてみましょう。今回登壇した企業はもちろん、Well-being Matrixでも今後さまざまな事例を紹介していく予定です。

社員のウェルビーイングが業績を左右する時代に

丸井グループの小島さんは、2016年からウェルビーイングプロジェクトを主導してきました。プロジェクトに関わる人材の主体性を重視した「手挙げ文化」などの取り組みを進めた結果、「職場で尊重されている」と感じる人が、28%から66%にまで上昇したといいます。

「これからの時代は、CWOのポストを置くなど、経営者層がウェルビーイングの旗を振る必要があります。特許や技術、ブランドだけで会社を存続させることが困難になり、企業の源泉である人材の力を今まで以上に発揮させなければなりません。健康経営は誰かと競うものではないので、各企業がウェルビーイングの定義を明確にし、推進していくことが大切になるでしょう」

iBASHOレポートの藤田さんも「働くことと幸せは、人生において密接な関係にある」と語ります。

「私にとってウェルビーイングな状態とは、自己以上に他者の幸せを重視できること。巡り巡って、自分にも幸せがやってくると信じています。また、働くことと幸せは密接しています。個人の働きがいを高めるためにも、職場を心地よい居場所、“イイバショ”にしていきたいですね」

職場を“イイバショ”にするためには、会社の課題や社風に合わせてセレクトしていくことが重要です。例えば、他愛もない雑談を生み出すために「ワンドリンク・スナック」が楽しめる空間と時間を準備したり、自分のブームを発信できる「プレゼンマイブーム」を設置するなど、今あるオフィス空間で改善できることもたくさんあります。詳しくは、2023年5月に発行された『iBASHO』レポート[1] を参照ください。

[1]『iBASHO』レポート

自分がウェルビーイングな状態になるためには?

「自分が幸せでなければ、企業も社会も幸せになれない。自分ファーストになろう!」と主張するのは、2017年から企業や地方自治体のウェルビーイングな取り組みを支援しているYeeYの島田さん。

三重県でのみかん収穫や和歌山県での梅収穫やウツボ漁など、農作業とワーケーションを組み合わせた企画も実施しているとのこと。普段フル回転している頭を空っぽにして、自然を感じることが、ウェルビーイングにつながるといいます。

「どうしたらウェルビーイングになれますか? と聞かれることもあるのですが、『なんか良い感じ』という心地よさを見つけるのがおすすめです。これは、頭で考えているだけ、本を読んでいるだけでは得られない感覚。ワーケーションなど、自らが行動しなければ得られません。自然の中に身を置いて、頭を空っぽにした時、何を感じるか? 風が気持ちいい、星空がきれい、食べ物がおいしい、農作業で良い汗をかいて気持ちよかったなど、自分にとって『なんか良い感じ』な状態を見つければ、自分の新たな価値に気づくはず。まずはやってみる、行動することが大切です」

ウェルビーイングは数値化したり、誰かと比べたりするものではありません。自分自身の心身が満たされているかどうかが大切です。自分自身に目を向けて、どうしたらポジティブで心地よい状態になれるか? それがわかれば、あとは「心地よく働くため」に落とし込むだけで、ウェルビーイングな働き方は実現できる、と島田さんは言います。自分ファーストになることが、会社そして社会全体をウェルビーイングにしていくコツだと教えてくれました。

今すぐできる! 心理的安全性を生み出すワーク「Good and New」をやってみよう

最後に、ウェルビーイングな職場には欠かせない「心理的安全性」を生み出すワークの方法を島田さんから教えてもらいました。

今回ご紹介するワークは、「Good and New」と呼ばれ、4人程度で行うもの。多くても6人までとしておきましょう。全員で小さな円をつくり、24時間もしくは1週間以内にあった「よかったこと(Good)」や「新しい発見(New)」を、1人あたり1分程度で共有します。

<心理的安全性を高める「Good and New」のやり方>

1.役職や年齢、性別など関係なくランダムな4人程度のグループに分かれる

2.1人ずつ1分程度で、GoodもしくはNewな話をする

3.話が終わるごとに拍手をする

4.全員が話終わったら、それぞれの気づきをシェア

5.ポジティブな気持ちでワークを終了

「たったこれだけ?」と思うかもしれませんが、この一連のワークで、話し手の意外な一面を発見できたり、役職の垣根を超えて笑い合えたり、良いバイブスを生み出す効果がありました。

島田さんいわく「半強制的にでも『Good and New』をやるだけで、心理的安全性が深まってコミュニケーションが加速する」とのこと。朝礼や会議の前など簡単なアイスブレイクとして、取り入れてみましょう。ちょっとの行動が、職場をウェルビーイングな空間に変えていくかもしれません。

これまで、多くの企業が社員の心や身体の健康よりも経済成長を重視する働き方をさせてきました。しかし、働く私たち自身が健康でなければ、良いサービスや事業は生み出せません。

まずは自分がウェルビーイングな状態になるために行動する、良い事例をまねてみる、ウェルビーイングな会社とは何か? あらためて、各企業がウェルビーイングを定義してみることで、少しずつでも社員が働きやすい環境を整えていければ、社会全体がウェルビーイングな状態にシフトしてくことができるでしょう。

プロフィール
Well-being Matrix
Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。