2024.01.15

ウェルビーイング・アワード受賞企業に聞く、より良い社会のための取り組みとウェルビーイングに対する意識

2023年9月1~3日、東京ビッグサイトで開催された「GOOD LIFE フェア」にて、ステージイベント「多様な幸福に向き合う、ウェルビーイングな取り組みと社会 ~ウェルビーイング・アワード創設に込めた想い~」が実施されました。

「ウェルビーイング・アワード」とは、多様化する幸福と健康に向き合い、認め合える社会づくりに貢献した企業や取り組みを表彰するために創設された組織で、本ステージでは最優秀賞のグランプリを受賞した住友生命、大王製紙をゲストに迎え、アワードに応募したきっかけや商品開発の取り組みなどが語られました。

さらに、ゲストとして元テレビ朝日アナウンサーで、現在はフラワーアーティストとして活躍する前田有紀さんも登壇されました。

「ウェルビーイング・アワード」に込められた想いとは?

ウェルビーイングとは「肉体的、精神的、社会的に満たされた状態にある」とWHOが定義しています。定義としては、未だこれといった答えがなく、少し曖昧な状態であるが、それでも世界的に広まってきている考えです。

そんなウェルビーイングな社会を推進するために創設されたのが「ウェルビーイング・アワード」。その背景には、どういった想いが込められているのでしょうか。

社会の推進に貢献し、最大多様な幸福を叶えられる世の中にしていくことが目的

ウェルビーイングアクション実行委員会 石川拓磨さん(以下、石川)は以下のように語ります。

 「ウェルビーイングな社会の推進に貢献し、最大多様な幸福を叶えられる世の中にしていくことを目的にアワードを設立しました。多様化する幸福の価値観に向き合って生み出された新しい商品やサービス活動を称え、表彰して広めていきたいと考えています」

ウェルビーイングな世の中にしていく取り組みをしている企業をたたえることで、世の中的にウェルビーイングという言葉の認知を上げていくきっかけになればとの思いを語られました。

グランプリ受賞「住友生命」「大王製紙」

第1回となる「ウェルビーイング・アワード2023」では、「モノ・サービス」「活動・アクション」「組織・チーム」の3部門を設け、最優秀賞のグランプリと、それに次ぐGOLDを選出。

審査委員長に慶応義塾大学の「前野隆司教授」と「宮田裕章教授」を迎え、2023年3月に、表彰式が行われました。

本ステージでは、「住友生命」「大王製紙」のご担当者がスピーカーとして登壇され、サービスや商品について込められた想いが伝えられました。

健康に対する行動変容を促した保険、住友生命の「Vitality」

※画像はホームページのスクリーンショットです(https://vitality.sumitomolife.co.jp/

「モノ・サービス」部門のグランプリを獲得したのは、住友生命の健康増進型保険「Vitality(バイタリティ)」です。

従来の生命保険に、「運動や健康診断などの取組みをポイント化し評価する」という仕組みを通じて、

「リスクに備え、リスクを減らす」という新しい発想の保険です。

Vitalityはまずは保険料を一律15%割引きます。毎年の健康診断の結果提出や運動などの健康増進活動の取組みに応じた獲得ポイントで判定されたステータスによって、2年目以降の保険料が変動します。

さらに短期の目標設定として、歩数や運動による1週間の目標達成状況に応じて、コーヒーショップやコンビニで指定のドリンク等に交換できるチケットがもらえます。こうして楽しみながら健康増進に取り組むことをサポートすることで、日本の健康寿命の延伸に寄与していきたいと考えているとのこと。

※画像は住友生命保険相互会社 藤田良仁さん(以下、藤田)

2023年4月からは、ビッグデータと人工知能を活用した疾病予測モデルを導入し、健康診断結果や日々の運動状況などに基づいて、疾患や入院リスクをアプリ上で表示するサービスを開始。

Vitalityのサービス開始からすでに5年が経ち、会員の健康に対する意識や行動には変化が出てきているそうで、加入者にアンケートを取ったところ、以下のような結果に。

・「加入前よりも、「健康」を意識にするようになった」 → 84%

・「1日あたりの歩数の増加率」 → 13%

・「血圧が10mmHg以上下がった」 → 53%

藤田 「ウェルビーイングは健康面だけでなく、精神的にも社会的にもより良い状態でないといけません。今後は『Vitality』を軸に健康増進を推し進めながら、病気があっても、年齢を重ねても、より良く生きていける『WaaS(Well-being as a Service)』の領域も拡大していく予定です」

マイナスをプラスに変えた大人の紙パンツ、大王製紙の「アテント」

※画像はホームページのスクリーンショットです(https://www.elleair.jp/attento/)

「活動・アクション部門」のグランプリを受賞したのは、成人向けの尿漏れ対策用の紙パンツ「アテント」。大王製紙は「エリエール」など、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの商品が有名な企業です。

人生100年時代といわれ、まだ元気なのに紙パンツが必要という方は増えていくでしょう。そんな中アテントは、2020年に発売40周年を迎え、「もっといいパンツになる」をキーワードに、利用者の声を聞いていったといいます。

※画像は大王製紙株式会社 中田賢二さん(以下、中田)

中田 「『売り場で紙パンツを買うのは恥ずかしい』『ご家族の方が代わりに買うときも少し気分が落ち込んでしまう』……。そういった声が集まり、紙パンツを使うことにハードルを感じている人がやはり多いと感じました」

「大人用おむつ」をもっと気軽にためらいなく使ってもらうためにデザインを改良

さまざまなお声を聞いて、紙パンツをもっと気軽にためらいなく使っていただくことが大切なのではないかと考え“かくさないパッケージ”として、カラフルなパッケージのアテントを販売。

中田 「このときはかなりコンセプチュアルに作ったので、その後、改良を行いました。店頭で見ても、紙パンツであることがわかりやすく、でも買うときの恥ずかしい気持ちを和らげられる商品をコンセプトに、新しいシリーズ『下着爽快・下着気分』を発売しました」

実際に利用した約3000名から、以下のようなフィードバックが集まったそうです。

・パッケージのデザインが良くて、持っても恥ずかしい気持ちがなくなった

・尿漏れが心配で外出するのがおっくうだったが、アテントのおかげで舞台やコンサートにも気軽に行けた

・デザインがおしゃれで、履くときも明るい気持ちになれた

中田 「私たち自身、このフィードバックにとても勇気づけられました。アテントの役割は、どちらかというと、マイナスをゼロにするものだと思っていましたが、マイナスをプラスにする商品であることを実感しました」

アワード受賞企業はいつからウェルビーイングを意識していたか

ウェルビーイング・アワード受賞企業は、いつからウェルビーイングについて意識し始めたのでしょうか。住友生命では、アワードへの応募以前から全社的にウェルビーイングについて考えていたといいます。

住友生命保険相互会社 藤田さん

 「住友生命は2021年に『ブランド戦略2.0』を発表し、一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイングに貢献する企業になることを表明しました。生命保険会社は死を取り扱うこともありますが、より良く死ぬというのは、より良く生きていくことでもあります。人生100年時代に、弊社なら真正面からそういったことに取り組んでいけるのではないかと思いました」

かねてから自社サービスがウェルビーイングの実現に貢献すると意識しており、Vitalityが社会課題になっている日本の健康寿命の延伸に適応できるサービスであると考えていたため、アワードに応募したとのことです。

平均寿命を意識する時代から、健康寿命を意識する時代へ。さらに、住友生命では、ウェルビーイング寿命をより長くしていくことを目標に掲げているとのことです。

藤田 「今年新たに制作した企業CMで、住友生命のロゴに『for your well-being』という言葉を添えました。新たなウェルビーイングのために何ができるのかを考え続けられる企業体でありたいです」

大王製紙 中田さん

大王製紙の中田さんは、アワード応募以前は、そこまでウェルビーイングを意識していなかったそう。

中田 「私たちの取り組みを見た人達から『ウェルビーイング・アワードに応募してみたら?』と誘ってもらったのをきっかけに、応募しました。メーカーが商品を提供する際に、身体的、社会的、精神的に幸福な状態を作ることを意識するのは、とても大事な考えです。それが結果的に、業績にもつながっていくと考えていたところでした」

アワード受賞もきっかけの一つとなり、自社の取り組みがウェルビーイングにつながっていることが会社として大きな気づきになったという大王製紙。今後もウェルビーイングを意識した商品開発を行なっていきたいと話します。

中田 「自社のためだけではなく、最終的にお客さまがどう幸せになれるのか。それを意識しないと、本当に良い商品開発やマーケティング活動はできません。社内でもそういうことを考える人が増えている雰囲気ですし、私自身ももっと進めていきたいです」

これからのウェルビーイング、それぞれが考えながら広く伝えていきたい

藤田 「ウェルビーイングという言葉が、最近では、少しずつ社内外に浸透してきた感覚があります。アワードに参加したことで、ウェルビーイングに取り組んでいる企業がたくさんあると知り、たいへん勇気をもらいました。一人ひとりがより良く生きる。個人的にもウェルビーイングを考えながら、これからどんどん広げていきたいと考えております」

中田 「私たちメーカーであれば、お客さまの健康や、精神的かつ社会的な幸せを考えて、モノを作っていく、提案をしていく姿勢はとても大事です。アワードは、その考え方を今一度思い返すきっかけになりました。お客さまの幸せを願って、どんな活動をしていけるか。もう一度しっかりと意識して、今後もやっていきたいと思います」

石川 「私はこの仕事がとても楽しいんですよね。ポジティブなもの、楽しく笑顔になれるものを紹介して広げていくことで、そのパワーをお裾分けしてもらえる感覚になれる。そのパワーをいただきながら、ますますがんばっていって、皆さんにも還元したいです」

石川 「これからもアワードを通して、ウェルビーイングをより身近に感じていただくために、企業のさまざまな取り組みを伝えていきたいと思っています。今後は、前田有紀さんにウェルビーイングナビゲーターとしてもご協力いただく予定です」

ゲストとして参加された前田有紀さんが今後ウェルビーイングナビゲーターとして参加されていくというサプライズで、本ステージは締めくくられました。

皆さんも各企業の活動や商品を通じて、ウェルビーイングについて考えてみてはいかがでしょうか?

(執筆:矢内あや/撮影:小野奈那子/編集:WBM編集部)

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。