2023.07.18

あの人にとっての“幸せ”とは? 残されたコトバから、より良く生きるためのヒントを探る

「名言」でウェルビーイング
私たちはそれぞれ境遇が違っていても、幸せな人生を送ることを目標に生きています。しかし“幸せ”という曖昧なイメージに振り回されてしまう人も少なくないのではないでしょうか。そんなときに指針の1つとなりそうなのが、先人の知恵。身体的・精神的・社会的に幸せなこととは? より良く生きることとは? 著名人たちの名言からヒントを探ります。

要約すると

  • 自分なりの幸せに気づき、幸福度を上げる。そのヒントとなる14の名言。

幸せは特別なものではない 

著名人たちは“幸せ”をどのようなものだと考えていたのでしょうか。  

多くの人に夢を届けたディズニー創設者のウォルト・ディズニーは「幸福とは心の状態である。それは、単にあなたの物事の見方による」と説きます。元THE BLUE HEARTSのボーカル、甲本ヒロトさんも「幸せを手に入れるんじゃない。幸せを感じることのできる心を手に入れるんじゃ」と彼らしい素直な言葉で語っています。 

さらに、小説『戦争と平和』や『アンナ=カレーニナ』を代表作に持つロシアの小説家レフ・トルストイは「幸せになりたいなら、なりなさい」と、とても潔い言葉を記し、同じくロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの小説『悪霊』のなかには、「人間が不幸なのは、自分が幸福であることを知らないからだ。ただそれだけの理由なのだ」というセリフが出てきます 

これらに共通しているのは幸せとは「特別なもの」ではなく、心のあり方だという考え方です。 

幸せを“点”ではなく“線”として捉える 

ドストエフスキーには、ほかにも「コロンブスが幸福であったのは、彼がアメリカを発見した時ではなく、それを発見しつつあった時である。幸福とは生活の絶え間なき永遠の探求にあるのであって、断じて発見にあるのではない」という名言があります。  

アメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンも「幸福は、めったに起こらない大きな幸運というよりも、毎日起こる楽しく便利な物事から構成されている」と、ドストエフスキーに少し似た考えを持っていました。 

彼らのように幸せを“点”ではなく“線”として捉えることができたら、これまでとは違ったウェルビーイングのかたちが見えてくるかもしれません。 

ウェルビーイングを高める方法

第8代南アフリカ共和国大統領になった、政治家のネルソン・マンデラは「運動は身体の健康だけでなく、心の平穏への鍵でもある」と説き、適度な運動がウェルビーイングに不可欠であることを伝えています。 

「適度な運動が体にいいなんていまさら……」と思われるかもしれませんが、どれだけいい影響を与えてくれるのかを改めて挙げてみると、そこには驚くほどのメリットがあるとわかります。 

「身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められている。更に高齢者においても歩行など日常生活における身体活動が、寝たきりや死亡を減少させる効果のあることが示されている」(厚生労働省サイトより)  

これだけのメリットがあるにもかかわらず、運動不足を放置している人が少なくないのは、実にもったいないことではないでしょうか。運動に関してはマンデラだけではなく、「適度の運動は、健康を生み、育て、長もちさせる」(ギリシャの哲学者アリストテレス)や「良いアイデアは、体を動かすことから生まれる」(発明家トーマス・エジソン)など、分野・時代を超えた著名人が言葉を残しているのですから、なおさらです。 

また、貧困や病に苦しむ人々を救済したマザー・テレサは、精神的・社会的に幸せな状態であるためにも「行く先々で愛を広めましょう。あなたと出会うすべての人がもっと幸せになるように」と語っていました。  

自分が幸せを得ることに一生懸命になるのではなく、まずは身近な人たちを幸せにしましょうという考え方は近年特に注目され、組織心理学者であるアダム・グラントの著書『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)も大きな話題になりました。 

そうして人を助けることで、得られるものは非常に多く、その1つが「ヘルパーズ・ハイ」と呼ばれるもの。自分の行いが他者や社会の役に立っていると感じられたとき、実は、私たちは“ハイになる”、つまり幸福度がぐっと上がるのだといいます。 

ほかにも、「幸福とは、趣味で生計を立てられる人のことである」(アイルランドの劇作家ジョージ・バーナード・ショー)や「成功は幸福への鍵ではない。幸福が成功への鍵である。あなたがしていることを愛しているなら、あなたは成功するだろう」(ドイツの医師アルベルト・シュヴァイツァー)など、仕事を楽しむこと、楽しいと思えることを仕事にすることがウェルビーイング向上につながるとする名言も多く、ここにも鍵がありそうです。 

ときには、欲望に忠実に 

最後に、『刺青』や『細雪』などを代表作に持つ小説家、谷崎潤一郎の名言を紹介します。 

「人は健康になろうと思ったら、西洋流に強く明るく、積極的に生きることだ。食物であろうが、色欲であろうが、欲するままに精一杯貪ることだ」 

谷崎の人となりを調べたことがある人は、この言葉に思わずクスッと笑ってしまうかもしれません。なぜなら谷崎は、この言葉どおり欲望に忠実に、とてもスキャンダラスな人生を送った人物だから。  

多くの女性と出会い、特に気の強い女性を崇拝していた谷崎は、「欲するままに精一杯貪る」を見事に体現した恋多き人生を送り、その経験は彼の作品に大いに活かされました。 

これまで紹介してきた名言に比べると谷崎の言葉は世俗的に感じられるかもしれません。しかしウェルビーイングについて考えるとき、ついストイックになりすぎてしまう人は、谷崎の言葉を思い出して、自分は何を食べたいのか、何がほしいのか、素直な思いに一度従ってみるのはどうでしょうか。 

チャールズ・M・シュルツによる漫画『ピーナッツ』の登場人物、ライナスも「からだの言うことに耳を傾けたら、ぼくらはもっと健康になるよ」と助言しています。 

名言から自分なりのウェルビーイングのヒントを

幸せのあり方は十人十色。同じ著名人の言葉に、救われる人もいれば、自分の状況とマッチしないと感じる人もいて当然です。それでもこれらの名言をヒントに、「自分なりの幸福とはなんだろう?」と考えることこそが、ウェルビーイング向上への第一歩となるに違いありません。 

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。