2023.07.27

世界中の研究によって発見された“睡眠知”を人生の味方につける

「眠くなる本」でウェルビーイング

要約すると

  • 100年の間で人々の睡眠時間は大幅に減っており、心身の病気が増えている。

  • 睡眠不足は、免疫機能の低下、ガンのリスク向上など深刻な害がある。

  • 様々な睡眠研究によって発見された「眠りの力」を有効活用するための方法がある

私たちは、ぐっすり眠ることで体調が整い、頭がすっきりとした良い気分になることも、睡眠不足で心身が不調になることも経験的に知っています。しかし、そもそも人はなぜ眠り、夢を見るのでしょうか。睡眠が脳と身体にとってどんな役割を果たしているのか。眠っている間、脳はどのように働いているのか。なぜ朝型人間と夜型人間がいるのか。思春期の不安定さは睡眠とどのような関係があるのか。睡眠不足は脳にどのような悪影響をもたらすのか——そうした睡眠を巡る様々なメカニズムについて、実は知らないことがとても多いのではないでしょうか。 

カルフォルニア大学バークレー校教授で、睡眠科学者・睡眠コンサルタントでもあるマシュー・ウォーカー氏は著書『睡眠こそ最強の解決策である』で、アメリカやイギリス、日本などのいわゆる先進国では睡眠が軽視される傾向にあり、この100年の間で人々の睡眠時間は大幅に減り、その一方で心身の病気が増えていると書いています。 

睡眠不足がもたらす害にはまず、たとえば「睡眠時間が6時間か7時間を下回る状態が長く続くと、免疫機能が衰え、ガンのリスクが2倍になる。それに加えて、睡眠時間がアルツハイマー病の発症の鍵を握る」というように、身体や脳に直接影響を与えるものがあります。また、記憶力や集中力が低下し、学習や仕事の生産性に悪影響をもたらし、さらには鬱病や自殺傾向など、心の問題の原因にもなります。 

著者は、こうした深刻な害が知られていない現状を嘆き、これまでに各国で行われてきた研究と睡眠を巡る様々な成果を紹介することで、睡眠が「心身の健康を保つ最強の薬」だと提言しています。  

そのテーマは、睡眠リズム、レム睡眠とノンレム睡眠、若者の朝寝坊と早起きの老人、徹夜と記憶力、心の問題、寿命と睡眠の関係、夢の意味や役割、睡眠障害、カフェインやアルコールなど眠りを妨げる要因、睡眠薬と自然療法、睡眠不足に伴う損失、睡眠時間が増えることで収入が増える可能性、眠るためのテクノロジー活用など多方面に及び、情報量も膨大。これさえあれば、あらゆる睡眠の疑問に応えられる「睡眠大全」と呼びたくなる知識が詰まっていますが、「読みながら眠くなったとしても一向に気にしない」という一文が添えられており、読み手は眠気に委ねて気兼ねなく本を閉じられるのも、本書らしいところです。  

ちなみに、巻末には「健やかな眠りのための12のアドバイス」も収録されています。 

午後3時をすぎたら昼寝をしない、夜寝る前にアルコールを摂取しない、寝室にデジタル機器を持ち込まないなど具体的なティップスが紹介されていますので、睡眠不足で悩まされている人や心身ともに健康な身体を保ちたい人はぜひ。 

睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウォーカー 著、SBクリエイティブ

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。