シニアになっても面白く楽しく、笑顔で過ごせるためのヒントがある。
たとえば、「状況に応じて気持ちを切り替え、環境に適応していく柔軟性」を持つこと、「趣味道楽」、「争いごとを引き寄せない」こと。
1つ目は、「状況に応じて気持ちを切り替え、環境に適応していく柔軟性」です。開成中高出身の剛爺。大学進学も就職活動も、希望が叶わず第三志望の道をいくことに。
大学受験は東京外国語大、早稲田大を志望するも失敗し、中央大へ入学することになります。けれど、当時のキャンパスは御茶ノ水。挿絵画家の父親に育てられた剛爺は、小学生の頃から資料探しに連れられ神保町に通っていました。中学生になると街のほぼ全ての古書店を回ったほど、古書店巡りを愛する剛爺にとって、大学の立地は神保町から近く、最高の慰めの場所に映ったそうです。結果オーライと受け止めました。
そして就職活動は朝日新聞、文藝春秋を目指すも落ち、博報堂へ。博報堂を選んだ理由の1つにも当時の社屋が神保町に隣接していたことがあったと書いています。さらに、入社前からコピーライターを志望するも配属はPR本部。予想外の配属先でしたが、そこでも結果オーライと、商品の売り出し方だけでなく新商品開発にも口を出すなど、新しい仕事を工夫しながら作っていくことを楽しんでいたといいます。
2つ目は「趣味道楽」です。ギター、読書、映画、野球、西部劇、将棋、食べ歩きなど趣味が多く、好きなことに没頭する剛爺。「仕事はあくまで仕事であり、人生の全てではない。会社に勤めたからといって、それまでやってきた趣味を諦めることはないし、むしろ『趣味こそが本業だ』くらいの気分で勤めた方が長続きする」と言い切っています。
実際、フラメンコギター好きが嵩じて、社内が多忙な時期に2週間スペイン旅行をし、本場のアンダルシア地方を巡った思い出話も披露されます。その後も仕事とプライベートでスペインを訪ね、スペイン、フラメンコギターをテーマにPRマンの経験も交えて書いた作品が『カディスの赤い星』。この作品は後に講談社から出版され、直木賞を受賞することになります。「書く」と言う趣味が趣味の範囲に収まっていないところからも、好きなことを大切にする熱量が伝わってきます。
3つ目は、「争いごとを引き寄せない」こと。人と関わりながら生きていると、意見の衝突や食い違いは少なからず起きるものですが、そんなときにも剛爺のスタンスは明確。争おうとせず、大抵の場合、相手に譲ります。その理由を「だれかと争うこと自体が時間の無駄」だと書きます。平和主義であることで、機嫌のよさを保っているそうです。
「一度きりの人生、好きなことを」
これは、好きなことに素直な剛爺の生き方が詰まった一言です。長い人生、何か新しいことを始めるのに遅すぎるタイミングなどありません。剛爺に倣い、趣味を楽しむライフスタイルを試してみてはいかがでしょうか。健やかで、笑顔で過ごせる日々が待ち受けているかもしれませんね。
『ご機嫌剛爺 人生は、面白く楽しく!』 /逢坂剛、集英社 1,430円(税込)