2023.11.27

冬は宇宙を感じるチャンス。肩の力を抜いて自分を見つめる時間をみつけよう

「宇宙」でウェルビーイング
夜空の星のまたたきには、自然界の様々な現象が持つ「1/fゆらぎ」という成分があります。小川のせせらぎや波の音を聴くとリラックスできるのも、その効果によるもの。また、壮大な自然や宇宙に触れることで自分の悩みがちっぽけに感じてしまった、自分にとって大事なことに気づいた、なんて体験も、きっと誰しも一度はあるに違いありません。

実は、空気が乾燥している冬は天体観測に最適だと言われています。ストレスフルな現代に生きる私たちにとって、とても重要かもしれない、星空を眺めたり人類や地球をも包括する宇宙を感じたりする時間。そんなひとときのために、宇宙を知るきっかけになるようなトピックを集めました。

要約すると

  • 夜空の星のまたたきにはリラックスを促す「1/fゆらぎ」成分がある。

  • 宇宙望遠鏡の観測結果から、宇宙の初期形態がわかる可能性も。

  • 日本でも独自に宇宙開発が進んでいる。

NASAの最新観測装置が最遠の天体を発見? 

2021年12月25日、アメリカ航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)が共同で開発したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、フランス領ギアナから打ち上げられました。宇宙望遠鏡とは宇宙空間に打ち上げられた観測装置で、地上の望遠鏡とは異なり、大気の影響を受けずに観測することができます。多額の費用がかかり、打ち上げも困難ではありますが、その分、大きな成果が期待されています。  

そんな宇宙望遠鏡の1つ、ジェームズ・ウェッブはさっそく、2022年7月25日に成果を上げました。 

「CEERS 93316」という天体が、今から135億7000万年前に存在した天体であり、348億1000万光年も彼方にある天体であることが分ったのです。国際研究チームの「CEERSコラボレーション」の報告によると、まだ科学的に不確かな部分があるものの、これは観測史上最も地球から遠い天体となるそう。  

宇宙のビッグバンが今から138億年前。宇宙が生まれてから僅か2億3000万年後に誕生したことを意味するこの天体は、恒星が集まった銀河の初期形態である可能性が高いと見られています。 

宇宙の歴史、生命の謎に迫る  

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主なミッションの1つは、ビッグバン後の最初の星や銀河を観測することです。  

宇宙初期の光は飛び続けるうちに波長が伸び、もともと可視光でも赤外線に変わって地球に届きます。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はこの赤外線に特化していて、さらに、同じく赤外線を観測するために2021年1月まで運用されていたスピッツァー宇宙望遠鏡に比べて、解像度が約7倍、感度も10倍以上。このため、より遠くの宇宙を見通すことができ、宇宙の歴史を知る手掛かりを期待されています。 

また、太陽系外惑星の生命を探るという大きなミッションも任されているのです。星や惑星があるところには塵が大量に存在しているため、そこからの可視光は観察できないのですが、その塵が発する赤外線を感知することで塵の中で何が起きているのかを観測することが可能になります。現在は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が調べた星や惑星の大気データが、生命起源の可能性を探る研究に役立てられています。  

環境省が日本一と認めた星空 

肉眼では見えない宇宙の起源を想像し、読み解くロマン。その一方で、自分の目で満天の星空を見ると、また違った感覚を覚えるのではないでしょうか。 

 環境省は、2006年に長野県の阿智村を「日本一星空の観測に適した場所」に認定しました。阿智村は人口約6500人の小さな村で、標高410mから2191mまでの山間地にあり、周囲が山に囲まれています。そのため光が遮られて、美しくはっきりと星空が見えるのだそうです。2012年には、「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」を開始、ロープウェイで標高1400mの地点まで登り、街の光が届かない漆黒の中で星空遊覧を楽しめます。開始からたった3年後の2015年には、年間6万人もの人を動員するまでとなり、現在も人気のイベントです。  

宇宙の入口に届く「サブオービタル旅行」 

そして、宇宙といえば気になるのが、一般人でも宇宙に行ける時代が来るのか否かです。 

今はまだ、宇宙飛行士をはじめ、一部の限られた人だけができる特別な体験となっていますが、それを一般にも広く提供しようという機運は高まっています。  

今現在、最も身近な宇宙旅行とされているのが「サブオービタル旅行」というものです。宇宙と定義される高度100km付近で数分間の無重力体験をした後、地球に帰還するプランで、宇宙の入口を覗いて帰ってくる、というイメージでしょうか。まだ旅行代金の相場は数千万円と高額。しかし今後、ロケットの回収・再利用技術、製造技術が改善されていき、需要が高まることで価格が下がることが予想されているといいます。  

「サブオービタル旅行」を手掛ける日本企業も  

宇宙産業というと、アメリカ企業のイメージが強いと思います。実際、サブオービタル旅行の最先端を走っていると言われているのは、ジェフ・ベゾスが設立したロケット開発会社Blue Originや、ヴァージン・グループ会長が設立したVirgin Galacticです。 

しかし実は日本にも、サブオービタル旅行の商用化を目指して奮闘する企業があります。それが、名古屋市にあるベンチャー企業、PDエアロスペース。2029年に「高度110km地点で約5分間の無重力体験をするサブオービタル飛行」を実現する目標を掲げており、1人約3000万円で8人乗ることができる宇宙船の独自開発に取り組んでいます。  

科学技術の進歩に伴って、着実に縮まってきている人類と宇宙の距離。宇宙の謎が今まで以上に解き明かされ、望めば誰でも気軽に宇宙に行けるような時代になったら……私たちは何を感じるのでしょうか。それまでは、続々と新しい話題が出てくる宇宙に関する研究や情報をきっかけに夜空の星を見上げて、「1/fゆらぎ」成分に触れてリラックスしてみませんか? 

画像素材:PIXTA 

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。