2024.02.13

行動経済学でWell-being!人が健康増進活動を続けたくなる仕組みとは?

住友生命「Vitality」 で活用されている、行動経済学のナッジを紹介

要約すると

  • 「行動経済学」とは、経済学と心理学を組み合わせたもの

  • ナッジ理論とは、人を誘導する仕掛けのこと

  • よりよい行動や選択をするために行動経済学を取り入れてみよう

運動したいのに続かない…そんなお悩みはありませんか? 思わず運動したくなって、気がついたら健康になっていた! そんなサービスがあったら使ってみたいですよね。

住友生命保険相互会社の健康プログラム『Vitality』は、そんな願いを叶えてくれるサービス。病気や怪我といった日々のリスクに備えるだけでなく、専用アプリで日々の健康状態を把握し改善することが可能です。なかなか健康行動を続けられない人のために、行動経済学のノウハウを活用し、健康へのモチベーションを上げながら“続けやすい仕組み”が取り入れられています。この行動経済学を活用したことが評価され、2023年3月に発表された「WELLBEING AWARDS 2023」では、モノ・サービス部門のグランプリを受賞しました。

今回は、『Vitality』でも活用されている行動経済学を解説します。どうしたら私たちがよりウェルビーイングな選択ができるのか考えていきましょう。

人はなぜ「健康行動」を続けられないのか?

私たちは、毎日たくさんの選択の中で生きています。朝起きて、まず何をするか、何を着るか、どこへどうやっていくか、誰と会うのか、その都度自分なりの選択をし行動しているはずです。しかし、全てが完璧な選択と行動の中で生きているわけではありません。

たまには、

・本当はいらないのに「セール品だから」と買ってしまう

・ダイエット中なのに「今日だけ……」とケーキを食べてしまう

・旅先でお土産を惜しまずに買ってしまう

・当たらないと思っているのになぜか宝くじを買ってしまう

・ソーシャルゲームに想定以上の額を課金してしまう

など、わかっていても感情に流されて不合理な行動をとってしまうこともあるでしょう。

これらの不合理な行動には「行動経済学」が関わっていると言われています。

行動経済学とは、経済学と心理学が融合した学問のこと。なぜ続けられないのか? なぜ楽な方へと流されてしまうのか? そんな私たちの日々の消費行動・経済活動において「わかっていても、やってしまう」ような人間らしい行動のくせや習慣を研究し、解明している学問なのです。

ついつい行動したくなる? 「ナッジ理論」の具体例

行動経済学を上手に活用することで、社会や経済をよりよい方向へ導くことも可能です。

そのひとつが「ナッジ理論(nudge)」。この言葉を定義したのは、2017年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のリチャード・セイラー教授です。直訳すると「ひじで軽く突く」ですが、トントンと後押しする程度の力で、行動に対して報酬を与えたり、選択の自由を阻害したりするものではありません。

『あなたを変える行動経済学』(大竹文雄・著/東京書籍・刊)では、ナッジについて以下のように記されています。

“簡単に言えば、ナッジとは、「自由には行動できます。しかし、できればより良い、あなたのためになることを選びやすくさせてあげましょう」という考え方です。”

つまり、「〇〇しなさい」と強制されるよりもそっと促される方が人は行動しやすいということ。私たちの日常の中にもナッジ理論は隠れています。具体的な例をご紹介しましょう。

<例1>「足跡」でソーシャルディスタンスを守る

コロナ禍での「ソーシャルディスタンス」。人によって距離の感じ方が異なるため、スーパーやイベント時、どこに並べばいいか悩むことも多かったはず。よく見かけた足跡のステッカーは、自然と足跡の場所に立ち止まれるように促してくれました。

<例2>「吸い殻を投票」して、ポイ捨てを抑制

投票式の吸い殻入れに変えるだけで、タバコのポイ捨てが減る取り組み。例えば、吸い殻入れに「旅行をするならどっち?」と書き、「未来」「過去」の2つの穴を用意することで、吸い殻を投票させます。遊び心を感じられるナッジですよね。これはイギリスの環境保護団体・Hubbubが仕掛けたものですが、現在では日本をはじめ世界的にも展開され、ポイ捨ての削減に貢献しています。

<例3>張り紙や騙し絵で放置自転車を減らす

「駐輪禁止」のステッカーが貼られていてもなくならない放置自転車。そこで、張り紙の内容を「ここは自転車捨て場です」の文言に変えるだけで、自転車が止められなくなった例もあります。また大阪府ではだまし絵で描かれたチューリップの花壇を地面に貼り付けたことで、迷惑駐輪が減ったとの事例もありました。

このように無意識に「よい行動」へと促すことは、ナッジ理論の長所を活かした取り組みです。

行動経済学と健康行動を掛け合わせた『Vitality』とは?

「人生100年時代」を生きていく上で、健康は欠かせません。これまでは「いざというときに備える」のが保険の役割でしたが、100年という長い人生を健やかに生きていくためにも、備えだけでは足りなくなってきました。

住友生命の『Vitality』は、リスクに備えるだけでなくリスクそのものを減らす健康増進プログラムがプラスされた保険です。加入当初から保険料を一律15%割り引き、オンラインでの健康チェックや、健康診断、がん検診、歩数の計測やランニングやゴルフなど健康増進活動に取り組むごとにポイントが獲得できたり、特典(リワード)がもらえたりします。

さらに、獲得ポイントによって毎年の保険料を変動させることも! バナナマンさんのCMでご存知の方も多いかもしれませんね。

Vitalityでも活用されている行動経済学のナッジ

『Vitality』には、健康行動を促進させるためにさまざまな行動経済学のナッジが活用されています。いくつかご紹介します。

エンダウド・プログレス効果

これまでついつい後回しにしてきた「健康行動」に価値を見いだし、無意識のうちに健康寿命を延ばせるようになるのは、行動経済学の「エンダウド・プログレス効果」とも関連してきます。これは、ひとつ効果がで始めると「よ〜し、もっと頑張るぞ!」と気持ちが高まるもので、人はゴールが近いことがわかると、進み続けたくなる心理のこと。ポイントや特典など小さな達成感を感じられるものがあると続けやすくなりますよね。

行動非行動の法則

行動したことによる後悔より、行動しなかったことによる後悔のほうがショックが大きく感じられること。「あの時やっておけばよかった……」と後悔しなくていいように、まずは「やってみる」ことが大切なのかもしれません。気になる習い事やサービスで無料のお試し会や体験が実施されていれば、ぜひチャレンジしてみましょう。新しい自分が見つかるかもしれませんよ。

ディドロ効果

「おしゃれなスポーツウェアを買ったら運動する気が起きた」なんて経験はありませんか? 新しい価値観を手にすることで、自分自身も変わりたくなってしまうのがディドロ効果です。お部屋のインテリアや持っているブランド品、家電を同じもので統一したくなる心理も関係していると言われています。小さなきっかけから、健康になるために上手にディドロ効果を使っていきたいですね。

正常性バイアスの法則

怪我や病気、災害など驚くような状態になっても「自分は大丈夫」と思い込んでしまう状況を「正常性バイアスの法則」と呼びます。健康診断で気になる結果があっても大丈夫と見過ごしていませんか? 健康状態が見える化されていたり、見過ごさない仕組みを持っておくことで、「まさか」や「想定外のリスク」に備えられるようになるはず。日頃からさまざまなシミュレーションをしておきましょう。

損失回避の法則

損を嫌うのが人間です。増税前のまとめ買いなどがわかりやすい例として挙げられます。『Vitality』は、加入時の保険料が15%オフからスタートし、2年目以降は健康診断結果の提出や運動等によりためたポイントに応じたステータスで保険料が増減します。「せっかく保険料15%オフで加入したから、これ以上保険料を上げたくない!」という気持ちが働き、自然と健康行動ができる仕組みになっています。

社会的選好

人は、他者のためや社会のために行動する「利他性」や、ギブアンドテイクな関係を作ろうとする「互酬性」などが働くと言われています。ウェルビーイング的視点から考えても誰かのために頑張るほうが幸福度が高いと言われていますよね。保険は自分だけでなく、家族のためになるもの。そう考えると、日々の健康行動にも真剣に取り組めそうですね。

すでに累計販売件数が160万件を超えている『Vitality』。加入された方の84%が健康を意識するようになり、1日あたりの歩数の増加率は13%、さらに血圧が10mmHg以上下がったひとが53%にも達しました。保険に加入したことで、加入者の意識だけでなく健康行動にまで変化が出たのは驚きですね。

行動経済学を上手に活用し、ウェルビーイングな選択を

たくさんの選択肢がある時代、私たちは「何をしたらいいか」迷うことがたくさんあります。行動経済学を知っておくことで、流されるままに行動することが減り、自分の意思で未来を選択できるようになるでしょう。

ウェルビーイングな生き方にするためにも、行動経済学の知識は役立ちます。人間が「つい」やってしまうくせや習慣を上手に活用できれば、健康行動に変えることも可能になるからです。今回ご紹介した行動経済学の例やナッジ以外にも、生活に役立つ行動経済学の知識はたくさんあります。

選択肢の多い世の中で、私たちがよりよい選択と行動をしていくためにも行動経済学の知識を生活に取り入れてみませんか? きっとウェルビーイングな生き方に一歩近づけるはずですよ。

(執筆:つるたちかこ/編集:ノオト)
参考文献:
『行動経済学の超基本』(橋本之克・著/朝日新聞出版・刊)
『あなたを変える行動経済学』(大竹文雄・著/東京書籍・刊)
画像素材:PIXTA

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Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。