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2024.01.19

「卒婚」はもう古い? 

人生100年時代は「尊重婚」が夫婦関係や人生をハッピーにする原動力に

要約すると

  • 「卒婚」とは、夫婦が互いに必要以上に干渉することなく、自由を認め合って、 最低限のルールを守り、ゆるやかなパートナーシップを築いていく夫婦の形

  • 「卒婚」の考えに共感し、実践意向のある人は5割を超える

  • 夫婦関係が良い人は「卒婚」をお互いの価値観やライフスタイルを大切にしながら、夫婦関係を深める「尊重婚」と捉える

  • 「尊重婚」を希望する人ほど、100歳生きることに意欲的であり幸福度も高い

多様性の時代、夫婦関係において「卒婚」という考え方は受け入れられるのか?

人生100年時代に入り、価値観やライフスタイルなどで多様性が求められる中、

夫婦関係も、夫婦ずっと一緒に過ごすという価値観に縛られなくてもよいと思いませんか。

20年前の2004年に『卒婚のススメ』という書籍が発売され 、

少し前には複数の芸能人が「卒婚」を発表して話題になりました。 1)

「卒婚」とは、婚姻している夫婦が互いに必要以上に干渉することなく、自由を認め合って、最低限のルールを守り、ゆるやかなパートナーシップを築いていく夫婦の形のことを言います。

先日、知人から「卒婚」という言葉は出ませんでしたが、婚姻状況を維持したまま、

月の半分は奥さんや子供と別に暮らす生活をはじめたとカミングアウトされました。

夫婦関係が特別悪かったわけではないようですが、「卒婚」をはじめてからは会話が増え、

夫婦関係はより良くなったようです。

身近でも「卒婚」を実践する人が散見する中、既婚者に「卒婚」といった選択肢がどう評価されるのかを調べてみたところ、「卒婚」よりも相応しい新しい夫婦のあるべき姿が見えてきました。

1) 杉山由美子著.卒婚のススメ. オレンジページ,2004,

「卒婚」の認知は4割程度だが、考えに共感し実践したい人は5割を超える

「卒婚」という考え方を知っている人は約4割でした。

男性よりは女性。年代では50代以上での認知が高くなっています。

【「卒婚」の認知】

「卒婚」を実践してみたいかという問いに対しては、

すでに実践している人も含め5割を超える人が実践してみたいと回答しています。

女性だけでなく男性でも5割近い人が実践してみたいと回答。

家事や育児などで何かと拘束されることが多い女性で「卒婚」意向が高いのは想定していましたが、男性でも高いことは意外であり少し驚きました。

【将来における「卒婚」実践意向】

夫婦の関係が良い人でも、4割近くが「卒婚」に興味あり

夫婦関係が良い人、悪い人別に「卒婚」を実践してみたいかを尋ねると、

夫婦関係が悪い人が「卒婚」を実践してみたいと考えるのは理解できますが、

意外なことに、夫婦関係が良い人でも4割近くが「卒婚」を実践してみたいと回答しているのが興味深いです。

夫婦関係が良いのであれば、あえて「卒婚」をする必要もないのではと思ってしまいますが、

なぜあえて「卒婚」を考えるのか?

その理由を探ってみると理想の夫婦のあるべき姿が見えてきました。

【夫婦関係別での「卒婚」の実践意向】

夫婦関係の良い人は「尊重」。悪い人は「解放/自由」。関係性によって「卒婚」の捉え方は異なる。

「卒婚」を実践したい理由として、

夫婦関係が悪い人は、「相手の好き嫌いやこだわりに合わせて生活するのに疲れたため」、

「お互いが求めているライフスタイルが異なるため」、「配偶者の都合に振り回されず、自立した自由な生活を送りたいため」など、これまで我慢していた環境から解放され、自由になりたい。「離婚よりはハードルが低そう」といったややネガティブな考えが理由となっています。

一方、夫婦関係が良い人は、「夫婦それぞれがお互いの自由を尊重できるようになったため」、「お互いの生き方や、ライフスタイルを尊重したいため」など、これまでの夫婦生活での信頼関係をベースに互いの価値観を大切にし、それぞれが自立し、やりたいことに打ち込める時間をつくりつつ、支えが必要な時は助け合う姿こそが、夫婦の理想形と考えているようです。

以上の結果を踏まえると、夫婦からの卒業を連想する「卒婚」というよりは、

互いの価値観を認め、夫婦関係を深めることを連想する表現の方が相応しいのではと考えました。

そこで、「卒婚」ではなく、人生100年時代の夫婦の在り方として新たに「尊重婚」を提唱したいと思います。

【「卒婚」を実践したい理由】

Q.「卒婚」を実践したい理由(自由回答) [ 夫婦関係が良好な人 ]

  • 一人一人が自立して生活できる事は素晴らしいと思うから。その上で長年培った信頼の下、必要な時に支え合う事ができれば、とても良いと思う。(50代女性)

  • お互い干渉し合わず自分の趣味を楽しみ、何かあれば助け合うような生活は良いと思う。(50代男性)

  • 子育てが終わり、これからの時間はそれぞれが自由に、自分らしい生き方をした方が幸せだと思うから。(50代女性)

  • 長年一緒に居るから、これからはお互いの生活を尊重して、ある程度自由に過ごすという生活に憧れるから。(60代女性)

  • それぞれが自分の人生にとって価値のあることに時間を使えばいいと考えるから。(60代男性)

  • 育児が終わって、お互いのやりたいことを自由にやる時間があってもいいと思います。昔は一緒にスキーやテニスをしましたが、歳を重ね、趣味が変わりましたから。(50代女性)

[ 夫婦関係が悪い人 ]

  • 子育て中ですが、完全に不仲なので子どもの将来のことを考えて離婚するよりハードルが低く感じました。(30代女性)

  • 迷惑ばかりかける夫からもういいかげん解放されたい。(50代女性)

  • 子供達も大人になり、私の母親としての役目はおわったなと。主人の母親ではないので、主人には自立した生活をしてもらおうかなと。実際これから多分仕事をリタイヤする主人にもそのほうがよいかなと。(60代女性)

  • 長年一緒居ることが窮屈で気が休まらない。(60代男性)

  • 今迄、散々苦労させられたから財産の為離婚はしたくない。(50代女性)

  • お互い納得出来れば、もう一度新しい夫婦関係を築けそうだから。(50代男性)

「尊重婚」を実践したい人ほど、100歳生きることに意欲的であり、人生が幸せな人が多い

最後に、夫婦関係が良好かつ「卒婚」改め「尊重婚」の実践意向がある人に、 「100歳まで生きたいか」と「幸福度」について尋ねました。 「尊重婚」を実践したい人ほど100歳まで生きることに意欲的であり、かつ幸福度も高い結果となりました。 夫婦がお互いを尊重し合い、個々の目標や夢を追求できる環境が整うことが、 人生100年時代や幸福度に大きな影響を与えているようです。

【100歳まで生きたいか】

【現在の幸福度】

人生100年時代では、夫婦の関係性や価値観も長い時間の中で変化していくことが想定されます。夫婦が同じ価値観で目標や夢を追求することも素敵なことだと思います。 一方で、お互いの価値観やライフスタイルを大切にしながら、夫婦や家族との関係を強固にしていく「尊重婚」という選択肢があってもよいのではないでしょうか。

【調査概要】

■調査名:「卒婚」についての調査

■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員(20-80代既婚男女) 665名

■調査手法:LINEによるアンケート調査

■調査期間:2023年12月

プロフィール
研究員
鈴木 良平
広告会社のマーケ部門に20年強在籍。
日常に隠された幸せのヒントを見つけ、発信し続けることで、
自身も含め、積極的に100年生きたいと思える人を増やしたい。