仕事終わりに、休みの日は昼前から、クラフトビールを嗜む
「民営の消防署で働いています。仕事は24時間勤務。代わりに休みは、24時間+αもらいます。仕事終わりは、まず帰宅後寝てしまうことが多いですが、起きたら買っておいたビールを飲んだり、面白そうなビール醸造所があればそこまで出かけて飲んだりと楽しんでいます。 クラフトビールを意識し始めたのは10年前くらいですね。妻とはビールの趣向が違うので、ひとりで飲むか、昼前から行きつけのお店へ。夕方はクールダウンしながら、20時ごろの夕食まで動画配信サービスを見たりぼーっと過ごすことが多いです。
最近は、自宅の建て替えに向けた整理整頓に邁進中です」。
無理のない範囲で身体を動かす
「健康面では、職場の休憩時間は走るなど身体を動かしたり、電車や車をなるべく使わず歩くようにしています」。
日常に沸き起こる感情がウェルビーイングを押し上げたり、または逆に阻害する要因にもなると考えられます。普段生活を送るなかで、どんなときにポジティブな感情、ネガティブな感情が沸くのか?お伺いしてみました。
ポジティブな感情
日々のポジティブな感情として、仕事が終わったら安堵感があると答えた鈴木さん。消防士という常に緊張を強いられる職場で、何もなく一日が終わりほっとできることは生活の中で大切なことだろうと思います。またコロナ禍で友人とリアルに会う機会があまりないからこそ、たまに会える機会は格別なのだそうです。
ネガティブな感情
ネガティブな感情4つのうち、2つは仕事について挙げてくださいました。職業上長時間労働の上、人手不足のため急に出勤時間が増える状況は苦痛以外の何物でもないそうです。また部下との人間関係に関して、うまくコミュニケーションが取れないことに対して悲しい気持ちになるとおっしゃっており、労働環境と仕事上の人間関係はウェルビーイングに良くない影響を及ぼすことになりそうです。
鈴木さんのウェルビーイングを構成する要素は、ほぼ趣味を挙げてくださったのが印象的でした。鈴木さんはウェルビーイングを「自分を維持するために必要なもの。モチベーションを維持して、創造力を養うためのもの。」と定義。大きく分けて、“刺激を求め、楽しむ”ONモードと”安らぎや落ち着きを得る“OFFモードに分類ができ、日常生活のなかで2つのモードを行き来していました。
刺激を求め、楽しむONモード
“ONモード”では、「クラフトビール」や「おしゃれの並行輸入」といった新たな出会いを通じ自分のモチベーションや気分を高め、自己表現の手段として「Tシャツのデザイン」に挑戦していらっしゃいます。
また、 「写真撮影」「車の運転」「青春18きっぷの旅行」「アウトドアスポーツ」など、昔、趣味だったことが最近になって復活し、鈴木さんの現在のウェルビーイングを構成するようになっていたのも特徴的です。
安らぎや落ち着きを得るOFFモード
“OFFモード”では、映画音楽や現代音楽、囲炉裏の火を見つめるといった行為のなかで心を落ち着かせていらっしゃる様子がうかがえました。
これらのウェルビーイングを阻害する要素としては、「仕事が忙しく、まとまった時間がとれないこと」を挙げていただきましたが、鈴木さんご自身が「仕事よりも、自分自身の人生を充実させるものに時間や労力をかけたい」という価値観をお持ちであることが大きな背景としてあるといえるでしょう。
「ウェルビーイング」とは、刺激を求め楽しむ「ONモード」と、リラックスできる「OFFモード」をバランスよく取り入れて、自分自身を維持すること。
現在の鈴木さんのウェルビーイングを構成する要素の中には、「クラフトビール」「Tシャツのデザイン」など10年以上前から実践されてきたことも多く含まれており、長く続けて楽しめる行動がウェルビーイングの要素になりうることがわかりました。また、行動が制約される社会情勢下だからこそ、“想像力”や“広い視野”を養える行動を積極的に探すなかで、「鉄道旅行」「アウトドアスポーツ」など昔の趣味だったものもウェルビーイング要素として新しく加わっています。
新しい要素がウェルビーイングに加わる一方で、体力や時代環境の変化、他者の視線を理由に辞めてしまった要素もありました。例えば「オフロードを走ること」。以前はその趣味のグループで楽しんでいらっしゃいましたが、オフロードは環境に影響を及ぼすと聞いてから、やめてしまいました。今後は「Tシャツのデザイン」が年齢不相応になればやめてしまうかもしれないと仰います。
1.「ONとOFF」のウェルビーイング
鈴木さんのウェルビーイングで最も特徴的だったのは刺激やモチベーションを喚起するONのものと、安らぎやリラクゼーションを与えてくれるOFFの両方で構成されていることでした。写真やTシャツのデザインなどクリエイティブな趣味を挙げているというところもあるのですが、鈴木さんのウェルビーイングの定義は「創造性を維持・発揮するもの」。
インスピレーションとなる刺激とリラックスを行き来しながら創造性を養うことが、鈴木さんにとってのウェルビーイングの根幹ともいえるでしょう。
2.「青春プレイバック」なウェルビーイング
写真や現代音楽、アウトドアスポーツなど、20代の頃にハマっていたものを最近になって再び始められ、それらがウェルビーイングの一部になっていました。歳を取ったら年相応のことを行うと考えがちですが、実は若いとき好きだったものは今でも好きだし、時間ができた今だからこそ再び楽しめるのではないでしょうか。逆に「70代になっても派手なTシャツを着るのもよくない」とおっしゃっていたように、「年相応にこうあるべき」という既成概念やエイジズムがウェルビーイングを阻害する要因にもなるような気がしました。
3.ウェルビーイングは「ライフジョイ」
「クラフトビール」や「Tシャツデザイン」など10年以上続けられているものを複数挙げられていたのは特徴的でした。繰り返しの多い日常の中で、飽きずにずっと楽しめるものこそ、「よりよく生きる」ために必要なことなのだと思います。「ライフワーク」も大事ですが「ライフジョイ」はウェルビーイングに強く関わっている点は発見でした。