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2024.01.17

台湾で学んだ人生100年時代を幸せに生きるヒントとは? 「Ageless Summit Asia」現地レポート

2023年11月10日、台湾の高雄市で開催された展示会「Ageless Summit Asia」のトークセッションに、所長の大高が登壇いたしました。

日々、人生100年時代の幸せを考えている研究所所長の大高。幸せのヒントのためならば、日本津々浦々どこへでも軽いフットワークで赴きますが、ついにこの度、日本を飛び出して、台湾に上陸しました!今回は、展示会の様子を一部ご紹介いたします。

「Ageless Summit Asia」とは

今回、お招きいただいた「Ageless Summit Asia」は、台湾で最も大規模な健康をテーマにした展示会です。この展示会の開催には、台湾における高齢化社会が背景にあります。 台湾の平均寿命は約80歳、人口の約18%が高齢者で、すでに高齢化社会に突入しています。そのような台湾社会において、「Ageless Summit Asia」は、先駆けてトレンドを発信することで、シニアがいくつになっても生き生きと人生を送る「Ageless」を実現することをテーマに開催されています。 会場では「住宅」「知恵」「健康」「飲食」「職業」「学び」の6つのテーマを元に、台湾の企業がブースを出展していました。 ブースでは、台湾のシニアの方々が興味のある各企業の商品やサービスの説明を受けたり、実際に商品を体験したりしていました。 足の運動ができる椅子を体験できるコーナー、自分にぴったりの紙おむつを知ってサンプル商品がもらえるコーナーが、健康のための最新医療機器が試せるコーナーなど、幅広い商品・サービスが集結していました。 また、会場の一角では音楽を流しながら、祭りのような楽しい雰囲気の中で参加者の皆さんで健康のための運動を実践しているコーナーもありました。

生活者の健康意識が高まる展示会において、大高所長は「アジアの高齢者市場の現状と今後の展開」をテーマにした記念のトークセッションにお招きいただきました。 こちらのトークセッションでは、台湾・日本・韓国のライフデザインの有識者が、各国のシニア市場の現状や展開、各研究機関の取り組みを話します。その後、対談にて、幸せな人生を送るための方法や秘訣についてディスカッションしました。

講演内容①100年生活者研究所について

ここからは、実際に講演で大高所長がお話した内容をご紹介いたします。 まず、講演の初めに、私たち「100年生活者研究所」についてご説明しました。

一般的なシンクタンクとは異なり、生活者の皆さまと共に考えて学びを得るリビングラボ形式の研究所であること、生活者の皆さまと関わりを持つ場が「巣鴨の100年生活カフェ・かたりば」「LINEのコミュニティ」であることをご紹介しました。 台湾では、このようなリビングラボ形式の研究所は珍しいとのことで、大きな驚きと高い関心を持っていただけました。 続いて、「100年生活者研究所」の立ち上げの背景にある日本の高齢化の現状をご説明しました。 現在は、日本は世界のなかで最も平均寿命が長く高齢者の割合が多いこと。その結果、世界のどの国よりも早く「生きたいか生きたくないかに関わらず、人生を100年生きてしまう時代」すなわち「人生100年時代」に突入していることをご説明しました。

講演内容②人生100年時代のビジネス戦略について~合言葉は「ウェルビーイング」

「人生100年時代」の特徴として、人生の時間が増えることで人生設計における選択肢が増えることをご紹介しました。

これまで寿命が80年であったときは、「教育」「仕事」「引退」という画一のルートに乗っ取った人生設計が大多数を占めていました。しかし、人生100年時代では、自分らしさを重視した人生設計を行う人が増えてきました。 その背景には、老後の関心ごとが、「ヘルスケア」すなわち健康を維持することから、「ウェルビーイング」すなわち自分らしい幸せを追求することに、変わってきていることを挙げました。 この変化を「シニアのウェルビーイング化」と名付け、3つの変化をご紹介いたしました。

健康の意識は、「身体の不調をなくすこと」から「自分らしく生きること」にシフトしています。 身体の一部が健康でなくても、心や人間関係が充足しており「自分らしい幸せ」が叶っていれば健康であるという考えが広まっています。

働き方の意識は、「65歳で引退し隠居生活」から「生涯現役で社会と繋がり続ける」にシフトしています。 実は、世の中の複数の調査・データから、現在3人に1人は定年後も働きたいと考えており、その理由の多くが「生きがい」のためであることが明らかになっています。特に、定年後の仕事は、自分の興味関心に適うものを求めているようです。

人間関係の意識は、「アナログな地縁・血縁」から「デジタルなソーシャル縁」にシフトしています。 以前、記事でご紹介した大崎博子さん(https://well-being-matrix.com/100years_lab/posts/100article_230428/)のように、デジタルを使いこなし老若男女たくさんの人と繋がることを叶えるシニアが増えています。

講演内容③ウェルビーイング発想による新しいビジネスチャンスについて

講演の最後に、「シニア期がウェルビーイング化」していることをふまえて、Hakuhodo DY Matrixでは新しいアイデアの発想法を提案していることをご紹介しました。

これまでのアイデア発想法では顧客の「ニーズ」から考えていたことに対して、新しい発想法では「自分らしい幸せ」を叶えてくれるかどうか、すなわち「ウェルビーイング」から考えることが大事であるとご紹介しました。 こちらのアイデア発想法は、Hakuhodo DY Matrixが発行している「ザ・ウェルビーイングレポート」で詳しくご確認いただけます。無料で全編ご紹介していますので、ぜひご覧ください(https://hdy-matrix.co.jp/well-being/pdf/report_20221125.pdf)。

台湾と日本の比較から考える、人生100年時代の幸せのヒント

講演を通して、台湾の方々は「人生100年時代」にかなり納得しており、「シニア期のウェルビーイング化」を重要視していました。 しかし、私たちが行った調査では、台湾の方々の「人生100年時代」の認知率は31%に留っており、まだまだ新しい概念でした。 なぜ、新しい概念である「人生100年時代」「シニア期のウェルビーイング化」に高い関心を示されたのか。その背景は、日本と異なる台湾の高齢化社会に対するポジティブな考えがありました。 調査より、台湾の人の約82%、およそ5人に4人が高齢化社会に対して前向きであると回答しました。たしかに、街中やSNSで見かける広告において、台湾は日本よりも健康に関するものが遥かに多く、シニアが健康に余生を過ごしたいニーズが高いことが伺えました。 幅広い年代で年上を敬う意識も高く、高齢化社会にかなり寛容でした。 しかし、高齢化社会にポジティブでも、人生100年時代が来ることに希望を抱いているわけではありませんでした。 特に、若年層は人生100年時代に対する不安が大きく、インタビューしたところ「100年生きると考えたときに、お金の不安がある」「台湾の社会制度は、お金の面で不安を感じる」のように、経済的に安定した生活が送れる基盤がないと100年人生を手放しで喜べない実態が伺えました。 これは日本にも通ずる課題であると思います。「100年生活者カフェ・かたりば」でのインタビューでも「100年生きたくない」と回答された方に、何があったら生きたくなるかをお尋ねすると「自分が歳をとったときに、今の社会制度で幸せな人生を送れるとは思えない」と答える方がいます。急激に進む高齢化社会に対して、社会や福祉の制度がアップデートされていないことに不安を覚える人が多いようです。 日本と台湾、どちらにおいても100年人生で熱中したいことや挑戦したいことがあるのにも関わらず、社会がそれを後押しする仕組みができていないことが課題にあります。 今回の台湾での講演を通して、100年人生をポジティブに捉えることを個人の問題とするのではなく、社会全体から基盤を作り上げることが大事であると改めて認識しました。 2024年も、100年生活者研究所は、生活者の皆さまの「100年生きたくなるような社会」の基盤づくりの一助となれるように邁進してまいります!

プロフィール
研究員
白岩 莉子
2021年に大広に入社と同時に、Hakuhodo DY Matrixに出向。幼少期から自分の祖父母にたくさんお世話になった経験や、趣味のボランティア活動にて老人ホームに訪問した経験などから、社会における世代間交流の活性化の一助になりたいと思うように。
「将来の夢は、全シニアの孫娘」を目標に掲げ、日々シニアマーケティングの業務に従事。