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2023.08.04

お盆前に考える、幸福をもたらす死との関わり方

平均寿命の60年前から死を意識!?

人生100年時代とも言われる長寿社会になったことで、程度こそあれ、死は時間的に遠ざかりました。では、それに伴い、自分の死を意識しながら生きる人の割合は少なくなっているのでしょうか?

20-80代の男女に調査をしてみたところ、予想とは裏腹にここ数年間の間に年に1回以上死を意識したことがある人は8割以上に及びました。

【自分の死の意識度】

年代別に見てみると、この傾向はシニア世代に限った話ではないことがわかります。20代でも60%以上が「1年に1回以上死を意識した」と回答しており、平均寿命を約85歳とすると※、寿命の凡そ60年前から死を意識していることがわかります。

【自分の死の意識度(年代別)】

身近な方の死や、新型コロナウィルスの流行、頻発する災害等のニュースを見ることで、年齢に関係なく自身の死を意識するきっかけが生まれているようです。

※厚生労働省 『令和2年都道府県別生命表の概況』より平均寿命 男性81.49歳、女性87.60歳の平均を用いて算出

死を意識して生きることは幸福度に影響を及ぼすのか?

では、死を意識して生きることによって、人生の幸福度に違いは出るのでしょうか?

答えは「いいえ」です。

私たちには、「死を意識することが日々の生き方や考え方に何らかの影響を及ぼし、幸福度に影響が出る」との仮説がありました。

しかし、下記の通り、年に一回以上死を意識していた人と意識していなかった人を比較しても幸福度に大きな違いは見られませんでした。

※幸福度は、10点~0点(高くなるほど幸せ)で聴取。

【死の意識度別 の 幸福度】

死を意識するかしないかの二択で幸福度が変わるほど、ことは単純ではなく、その意識を構成する複数の要因によって、幸福度はそれぞれの方向に変動するのだと考えます。

意識してしまった死を、どう認識するかによって幸福度が変わる?

そしてその要因の一つは、「死の受け止め方」かもしれないこともわかりました。

下記は、「死とは、当たり前のこととして受け入れられることである」という考えに近い人と「できることならば避けたいものである」という考えに近い人の幸福度です。死を避けたいものとして遠ざけている人よりも、受け入れている人のほうが、自分は幸福だと感じている人の割合が15.4pt高くなっています。

【死の受容度別の幸福度】

このように幸福度が変わる理由は、自分ではコントロール不能な「死」を忌避せず受け入れることによって、代わりに自分で変えられる「これからの生き方」に意識を集中できるようになっているからかもしれません。

死を意識したことによる意識や行動の変化を聞いてみたところ、死を受容できている人は、「日々の生活を大切に思えるようになった」「自分が死ぬまでにやりたいことを意識的に実行に移すようになった」など、これからの生き方を前向きに検討し直した割合が高くなっています。

【死の意識による行動変化】

「死活用」のススメ

最初に見たように、自分の死を意識し始めてから実際に死を迎えるまでには意外と時間があります。その間ただ死を忌避して怯えるのではなく、「誰にでも起こりうること」として早々に受け入れ、そこに至る過程である生を充実させるための手段として死を活用する“死活用“の考え方を取り入れてみるのはいかがでしょうか?

死との距離が相対的に近くなるこのお盆の時期こそ、新たな死との向き合い方を検討する良い機会かもしれません。

【調査概要】

■調査名 :人生100年時代の死の認識についての調査

■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員うち830名

■調査手法 :LINEによるアンケート調査

■調査期間 :2023年7月

プロフィール
研究員
宮本 祐帆
2020年に博報堂入社。現在はダイレクト領域のプラニングや、新規事業開発に従事しています。生き続けることをノルマではなく、素直に喜ばしいことと思える社会にしたいと思って活動しています。