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2023.11.13

11月22日は、“いい夫婦の日”。 人生100年時代を幸福に生きる、パートナーシップの多様なあり方

人生100年時代の“いい夫婦”のあり方は、もっと多様で良いはず

現代社会の多様性は加速度的に進行し、夫婦やパートナーシップのあり方も例外ではありません。ステレオタイプな“いい夫婦”のイメージは、もはや少数派なのかもしれませんね。これからの人生100年時代においては、これまでの人生80年時代よりも、夫婦・パートナーと過ごす時間が20年ほど伸びることになります。夫婦・パートナーとの価値観の違いを乗り越え、幸福な関係を築くためには、その多様なあり方を探求することが肝要と考えます。

この記事では、夫婦やパートナーがどのように幸福な関係を築くかを探求していきます。また、異なるバックグラウンドを持つ夫婦が直面する課題や、困難を乗り越えた手法についても深堀りしていきます。

“いい夫婦の日”に、読者のみなさんが夫婦やパートナーとの関係性を見つめ直し、より幸福な関係性に発展していくためのきっかけとなれたら幸いです。

夫婦・パートナーと関係がいい人は、「長生きしたい」

2023年9月に実施した「夫婦やパートナーとの関係性調査」の結果をもとに、夫婦・パートナー関係に関するいくつかの発見を共有させてください。

 最初に、夫婦・パートナー関係と100歳まで生きたい気持ちの関係を分析しました。 “関係が良い”夫婦・パートナーは、“関係が悪い” 夫婦・パートナーの約1.4倍、100歳まで生きたい(「とてもそう思う」+「そう思う」)方が多いことがわかりました。人生100年時代を幸福に生き抜くためには、夫婦・パートナーとの良好な関係を維持することが肝要と言えます。

【夫婦・パートナーとの関係と100歳まで生きたい気持ち】

社会参画・生活基盤・感情に関する価値観の合致が重要

続いて、夫婦・パートナーで合致している価値観について、「100歳まで生きたい人」と「生きたいと思わない人」の差を見ていきます。

差が小さい項目は、「家事の分担」や「家族・子育て」などとなりました。「100歳まで生きたい人」も「生きたいと思わない人」も、同じぐらい合致していると考えているということです。これは、夫婦の価値観として大事だとみんなに認識されている項目なので差が小さいということでしょう。

差が大きい項目は、「仕事・キャリア」「社会的関与・コミュニティ」といった社会参画に関する項目や、「生活リズム」「食事」といった生活基盤に関する項目、「笑い」「怒り」といった感情に関する項目となりました。「100歳まで生きたい人」と「生きたいと思わない人」で、価値観の合致度に差が見られます。

これらの価値観を夫婦・パートナーで合致させようとすることは、100歳まで生きたいことに、つながるのかもしれませんね。

【100年生きたい気持ちと夫婦・価値観の合致】

価値観の相違を乗り越えるためのヒント

ここで、“関係が良い”夫婦・パートナーは、どのぐらい価値観が合致しているのか、調べてみました。

すると、 “関係が良い”夫婦・パートナーにおいても、一部の価値観の相違は避けられないことが分かりました。「趣味」「怒りを感じる点」「自己成長・学び」「仕事・キャリア」などの価値観では、およそ30%以上が合致していないと回答しています。

【“関係が良い”夫婦・パートナー間で合致していない価値観】

では、“関係が良い”夫婦・パートナーたちは、どうやって価値観の相違を乗り越えているのでしょうか。

下のグラフは、夫婦・パートナーが、その関係を良好に保つために重要だと考えていることを、「関係がよい人」と「関係が中位の人」、「関係が悪い人」で比べてみたものです。

“関係が良い”夫婦・パートナーたちが重視している要素は、「お互いを信頼する」「感謝の気持ちを表現する」「お互いにサポートする」「お互いを尊重し異なる価値観を認め合う」など、“パートナーの存在を強く意識している”言動であることがわかりました。

また、“関係が良い”夫婦・パートナーと“関係が悪い”夫婦・パートナーで差分が大きくなっているのは、「お互いを信頼する」「感謝の気持ちを表現する」「一緒に楽しいことをする」「約束を守る」「愛情を表現する」など、パートナーに対する“日々の具体的な行動”が中心となっていました。関係を良好に維持するためには、“パートナーの存在を強く意識する”気持ちと、“日々の具体的な行動”の両立が肝要だと言えそうです。

 “関係が悪い”夫婦・パートナーでは、「あてはまるものはない」が20%以上となっており、先の章でも触れた通り、相手に対して「この人には何をしても無駄だ」などの諦めや決めつけの気持ちを持ってしまっているのかもしれません。

【夫婦・パートナーとの関係を良好に維持するために重要な要素】

加えて、夫婦・パートナーとの関係を良好に維持するために重要な要素の設問において、あてはまる項目数を分析したところ、“関係が良い”夫婦・パートナーたちは、平均で5.8個の要素を大切にしており、8個以上に当てはまる方が30%以上となっていました。一方で“関係が悪い”夫婦・パートナーでは2.9個の要素にとどまっており、0~1個の割合が約50%となっていました。“関係が良い”夫婦・パートナーたちは、相手との関係を良好にするための言動を複数パターンもつことで、その関係を維持していることが示唆されました。

【夫婦・パートナーとの関係を良好に維持するために重要な要素】

夫婦・パートナーとの関係を良好に維持するために重要な要素については、“最もあてはまるもの”も聴取しています。興味深いことに、関係の良し悪しに関わらず、「お互いを尊重し異なる価値観を認め合う」が1位となっており、各層のスコアの差はほとんどないことが明らかになりました。

大丈夫です。ちゃんとみなさんわかっていらっしゃるんです。今実際に行動に移せていない方も、ちょっと恥ずかしかったり、言動を変えるきっかけがないだけなのかもしれません。

次の章では、実際に価値観の相違を乗り越えた国際カップルの事例から、パートナーシップ強化法について学んでいきたいと思います。

【夫婦・パートナーとの関係を良好に維持するために“もっとも”重要な要素】

国際カップルに学ぶパートナーシップの強化法

今回、快くインタビューを受けてくださったのは、筆者と長年家族ぐるみのお付き合いをさせていただいている国際カップルです。現在は夫の母国ブラジルに一家で赴任中。1歳・3歳・5歳・7歳の4人の女の子を育てるパワフルなカップルです。

夫のAさんは、ブラジル人の父親と日系ブラジル人の母親を持ち、国籍はブラジルです。幼少期に一家で来日し、日本の小学校~大学を卒業し、日系企業に入社しました。妻のBさんは、関西出身で、結婚と同時に退職し、現在は専業主婦として異国の地で子育てに奮闘しています。

彼らが最初に乗り越えた壁は、「食文化の壁」だったそうです。妻のBさんはお刺身が大好物なのですが、夫のAさんは大人になるまでほとんどお刺身を食べてこなかったそうで、最初は苦手だったそうです。

夫のAさんは、あえて週に1回はお刺身を出してほしいとリクエストし、ちょっとずつ食べられる魚の種類と量を増やしていったそうです。相手の食文化を積極的に受け入れて、自分自身を変容させていこうという努力が素晴らしいですよね。今では夫のAさんもお刺身が好きになったそうですが、ウニとイクラだけはいまだに苦手とのことです。

次に彼らが乗り越えた壁は、「家族との距離感」だったそうです。Aさんは、休日はとにかく家族全員で一緒にいたいという考えで、これはブラジルの文化・宗教やご両親の影響が大きいそうです。妻のBさんは、時々ひとりの時間が欲しいタイプ。子どもが増えるにつれて、自分の時間が無くなっていくことをつらく思っていたそうです。そこで、Aさんは毎月最後の日曜日は、ベビーシッターさんの助けを借りながら家事・育児を引き受け、Bさんが丸1日自由に行動できるように仕組みを作ったそうです。これは日本にいるときから現在のブラジル赴任中まで続けている習慣だそうで、夫婦関係を良好に維持するために大いに役立っているそうです。また、Aさんは結婚前にはほとんどできなかった料理も得意になり、自分が人として親として成長できていると強く実感しているそうです。

彼らが良好な関係を維持している秘訣は、共通の価値観と異なる価値観の調和にあると考えられます。夫と妻は、子育てに対する価値観について共通の理解を持っており、これが彼ら家族としての絆を強くしています。同時に、彼らは食文化や家族との距離感に関する価値観に違いを抱えていますが、それを対立ではなく、相互尊重や成長の機会として捉えています。

もちろん、もともと文化が異なる国際カップルと、同じ文化圏なのに合わない部分がある夫婦とで、歩み寄りの形は違うかもしれません。 

しかし、先ほどみたように「“関係が良い”夫婦・パートナーにおいても、一部の価値観の相違は避けらない」ことがわかっています。私たち日本人同士のカップルも、夫婦やパートナーで価値観が異なる部分があることを前提として受け入れる所から関係を考え始めることが大切ではないでしょうか。

異文化夫婦の例は、多様性を認め、新しい価値観や文化を受け入れることの重要性を示しています。幸福な夫婦生活を実現するカギは、お互いの違いを認めながら、愛と尊重をもって関係を育てていくことでしょう。

自分たちらしいパートナーシップを構築しよう

これまで、調査結果や国際カップルの事例から、多様な夫婦・パートナー関係を幸福にするヒントを探ってきました。調査結果から明らかになったように、“パートナーの存在を強く意識する”気持ちと、“日々の具体的な行動”の両立や、「お互いを尊重し異なる価値観を認め合う」ことが良好な夫婦・パートナー関係を維持するうえで肝要なのは間違いないでしょう。

国際カップルの事例からも見られる通り、良好な夫婦・パートナー関係を維持するうえで「一つの正しい方法」はないということを理解することも肝要と考えます。それぞれの個人は多様であり、同様に夫婦・パートナー関係もユニークで多様なはずです。自分たちらしい、自分たちならではの関係を見つめ直し、夫婦・パートナーとお互いの幸福を共に築く方法を見つける努力が大切だと考えます。

最後に、調査に回答いただいたお声の中から、特に筆者の心に残った「夫婦・パートナーからかけられた言葉や言動でとくにうれしかったこと」をご紹介して終わりたいと思います。本記事の内容が、少しでもみなさまの幸福な人生のお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

Q あなたがあなたの配偶者またはそれと同等な交際相手・パートナーからかけられた言葉や行動で特にうれしかったことについて、可能な限り具体的エピソードを踏まえて教えてください。

  • 何と言っても「食事」に関すること。共に好き嫌いが無く、毎食、常に妻の手作り料理に有難く満足して頂いています。結婚以来、何十年もの間「外食」経験は、数えるほどしかありません。それだけ、お互いが満足して、味わって頂いているということだと思います。昔からの言い伝えに「お前百までわしゃ九十九まで」とありますが、ひとり心の中で唱えていることは彼女もご存じあるまい。(82歳男性)

  • 子どもから「パパの一番の友だちは?」と聞かれた時に、「ママ。奥さんで一番の友だちでもある。」と答えていたとき。(42歳女性)

  • 感謝してる事があっても、なかなか声に出して「ありがとう」とは、言えない事が多かったですが、配偶者と出会って、考え方や行動を見て、僕も声に出して感謝する事が自然に出来るようになったことは、自分自身でも嬉しかったです。(46歳男性)

  • 今のままでいいといってくれたこと。(60歳女性)

  • 不定期にお互いプロポーズし合っています。(58歳男性)

【調査概要】

■調査目的:夫婦やパートナーとの関係性調査

■調査対象者:20~80代の男女 728名

■調査手法:インターネットモニター調査

■調査期間:2023年9月

■調査会社:株式会社 H.M.マーケティングリサーチ

プロフィール
研究員
平間 圭太郎
事業会社でのブランドマネジメント・新商品開発などの経験を経て、22年よりHakuhodo DY MATRIXに在籍。ウェルビーイングとマーケティングのチカラを融合して、世の中をちょっと良くする”Well-being Marketer”を目指しています。新米パパとして仕事・育児・家事のバランスに苦闘中です。