「幸福」は自力で叶えるものか、他力によって叶うものか

幸福は自力で叶えるものでしょうか、それとも他力によって叶うものでしょうか。幸福をめぐる議論ではこのような二項対立がよく出てきますが、この記事では、幸福をめぐる自力／他力問題を中心に考えてみたいと思います。

【幸福は自力か、他力か】

ひとまずアンケートを取ってみたところ、自力派がおよそ2/3、他力派が1/3という結果になりました。3人いたら2人が自力派で、残る1人が他力派だということになります。　自力派の人が若干多い傾向はありますが、他力派も一定数確実にいるようです。

【100年生きたい人は自力派？他力派？】

「人生100年時代において、あなたは100歳まで生きたいと思いますか？」という当研究所お決まりの質問との相関を見てみると、100年生きたい人の方が自力派の割合が少し高い傾向があるようです。しかし、そもそも自力／他力とはどういうことなのでしょうか。

「他力本願」の本意は「他人まかせ」ではない！　他力を信じて生きるとは？

他力とは、元々仏教用語です。浄土真宗の思想では「他力」を「他人の力」だと解釈するのは間違いであると言います。本来、「他力」というのは仏の力、阿弥陀仏の慈悲のはたらきのことなのです。つまり、「他力本願」というのは「他人まかせ」にするという意味ではなく、阿弥陀仏の本願の力に頼って成仏することを意味します。浄土真宗の信者ではない人にも当てはまるような形で解釈すると、人生には自分の力だけではどうにもならないことがある、そんなときは周りの人の力を信じてみたり、成り行きに身を任せてみたりすることも大切である、というような意味になるでしょうか。

（参考文献：水月昭道著．他力本願のすすめ．　朝日新聞出版、2012）

「他力」と「ケセラセラ」から考える、人生100年時代を幸福に生きるための方法。

「他力」の本来の意味と見直すべき価値を確認したところで、では人生100年時代、どのような人生観で生きていけば幸せに生きられるのか、考えてみたいと思います。アンケートでは、5つのタイプを提示し、「今の人生観」と、「人生100年時代のこれからの人生観」に最も近いタイプはどれか聞いてみました。

提示した5つのタイプはこちらです。

• 自分の人生は自分の意志で切り拓いていくものだ。座右の銘は『為せば成る』。

• 人生は人との出会いによって良くも悪くも大きく変わるものだ。座右の銘は『一期一会』。

• 人生には自分の力ではどうにもならないこともあるので、ときには成り行きに身を任せることも大切だ。座右の銘は『ケセラセラ』。

• 周りの人に求められることより自分がやりたいことをやる方が自分も周りの人も幸せになれると思う。座右の銘は『好きなことで生きていく』。1)

• どんな環境でも文句を言わず今いる場所で最善を尽くすことが、結局幸せへの近道になると思う。座右の銘は『置かれた場所で咲きなさい 』。2)

1) DJ社長著．好きなことで生きていく． NORTH VILLAGE，2023，

2）渡辺和子著．置かれた場所で咲きなさい． 幻冬舎，2012，

【今の人生観とこれからの人生観】

今の人生観も、これからの人生観も、「ケセラセラ」タイプが最も多かったようです。

「今」の人生観では少ないのですが、「これから」の人生観で増えるのが『好きなことで生きていく』タイプと『為せば成る』タイプ。自分のやりたいことをやる生き方や自分の信念を突き通す生き方は、なかなか実現できる人が少ないからこそ、憧れるものなのかもしれません。

もちろん、どの人生観が優れている、劣っているということは決してありません。実際には、複数の考え方をその時々によって使い分けながら生きている人も多いのではないでしょうか。ただ、これまで見てきたように、適度に「他力」を信じて頼りながら、「ケセラセラ」で生きていくと、幸福な人生へと近づけそうな気もします。

幸福をめぐる議論に明確な一つの答えが出ることはありません。ああじゃないこうじゃないと考えながら、自分なりの幸せを見つけていく、この記事もそのきっかけの一つになれれば幸いです。

【調査概要】

■調査名：100年生活の自力と他力に関する調査

■調査手法： LINEによるアンケート調査

■調査対象者：100年生活者研究所　LINE会員(20-80代男女) 628名

■調査期間： 2023年11月