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2024.01.26

健康でないと人は幸せになれないのか?

オンラインラボの皆さんの、障がい・持病をもっている比率は

当研究所の“100年生活者カフェ”で、「あなたは100年生きたいですか?」とお伺いすると、多くの方から「健康なら」というお答えが返ってきます。この場合の「健康」が何をさすかは人それぞれだと思いますが、そもそも健康でないと人は幸せになれないのでしょうか?

私は研究員の中で唯一の車椅子ユーザーです。2015年から脊髄の障がいによって両下肢機能全廃となり、立つことも歩くことも全く出来ない状態のため、あらゆる面で非常に不便な状態になりました。

幸いなことに痛みは無く、立てない・歩けない以外には今までと変わりなく問題がないため、周りの人々の理解と助けを得て支えていただきながら仕事を続けることが出来ています。また、一人暮らしをして生活面で自立しています。本当にありがたいことです。

そんな私ですが、今回の記事を書くにあたりまずはオンラインラボの皆さんの健康状態が気になったのでアンケートで質問をいたしました。結果は以下です。

【障がい・持病をもっている人の割合】

半数の方が障がいや持病がなく、約3割の方が現在または過去に障がいや持病をもっているとの結果になりました。皆さんが様々なコンディションで日頃調査にご協力いただいていることに、あらためて感謝いたします。

障がい・持病の有無と幸福度の相関性

本題の「健康でないと人は幸せになれないのか?」の問いに対し、障がい・持病の有無と幸福度の相関性も調査いたしました。

【障がい・持病を持っているか否かと幸福度の相関性】

障がいや持病を今も過去ももっていたことがない人の幸福度がやや高い傾向になりました。しかし、今現在もっている人の比率とそれほど大きく変わらない結果となりました。

今回は、フリーアンサーでもご意見をいただきましたので、いくつかご紹介します。

Q.あなたは障がいや持病があることは不幸だと思いますか?

【障がいや持病を今も過去ももっていたことがない人の回答】

  • 不幸だと思う。人の世話になることが苦手なので、日常生活が一人でできなくなったら自分の存在意義を感じられないと思う。(女性・60代)

  • 他人に世話を掛けることに抵抗がある。(男性・70代)

  • 自力でできることがあれば持病や障害があっても不幸ではないが助けてくれる人が少しでも迷惑だと思っているようだったら不幸と感じるかもしれない。(女性・60代)

  • 夫が難病で身体障害者になってしまいました。私は仕事を辞めて自宅介護をしています。病気にならなければ全く違う生活をしていたと思うのですが、そこまで不幸とも思わず、こんな風に人生最後を寄り添って過ごせることに自分でも驚いています。(女性・60代)

  • 障害や持病をgift と捉え前向きに生きる方を知り素晴らしいと感じました。(女性・50代)

【今はもっていないが、過去にもっていたことがある人の回答】

  • 若い頃家から出れない程体調が悪く、生活に支障があるというのは、やはり辛いです。(女性・50代)

  • 思う。痛いのは辛い。常にそこに気持ちがいってしまう。(男性・60代)

  • 思わない。過去に持病を抱えていたので、健康な人を羨む事はあったが、周囲の理解やサポートが手厚かったため不幸だとは思わなかった。(女性・30代)

  • 完治しているが、人に色々と助けて貰って幸せでした。(60 代・男性)

  • 胃全摘、その後の抗癌剤治療にて胃がんを克服しました。その時点では、生きることもつらいと思いましたが、現在では、健康や生命に感謝できる機会だったと思っています。(40代・女性)

【今現在、もっている人の回答】

  • 不幸な時もあると思う。病気を理由に仕事を選んだり、就職を断られたりする事がある。(女性・50代)

  • 不幸と思える気持ちは強くなりがちだと思います。健康であった時代があれば、どうしても比べてしまうからです。痛みを感じることもなく、どこへでも自由に行動でき、楽しく笑って過ごせる時間が、病気によって、どれだけ減らされたことか。不幸を感じないと言ったら、嘘だと思います。(女性・50代)

  • 程度にも依るだろうが、不便ではあっても不幸ではないのでは?障害や持病は誰もが少しは抱えているもの。その人たちと力を合わせるためにも、共通認識があったほうがいい。(男性・60代)

  • 私は、子供の頃から聴覚障害者ではあるけれど、不幸とは思ってない。理由?これって理由があるのかしら。健全な人(機能)を比較するから不幸と思うのだと思う。比較する心が無ければ、理由はいらないのでは?(女性・60代)

  • 思いません。障害を得た結果、いままで持てなかった自己肯定感を学ぶことができたので。(女性・40代)

たくさんのご意見をありがとうございます。

それぞれの人生経験から様々な考え方があり、「健康でないと人は幸せになれないのか?」の問いの答えは、「人によって異なる」と言えましょう。

自身の健康状態にかかわらず100人いれば100の幸福に対する価値観があるのだと気づかされます。

また、フリーアンサーをご回答くださった698名の方のご意見にすべて目を通した時に印象に残ったのは、障がいや持病の症状自体による苦しみの他にも、「人に迷惑をかけたくない」というご意見がとても多かったことです。

一方で、家族の役に立つことで幸せを感じる、人に助けてもらって幸せを感じた、という回答もありました。

人に迷惑をかけたくないか、役に立ちたいか

この「人に迷惑をかけたくない」と「人の役に立ちたい」の比重についても質問をいたしました。

【人に迷惑をかけたくないか、役に立ちたいかの比重】

フリーアンサーの印象通り、「人に迷惑をかけたくない」人の方が多数派でした。

一方で、「人の役に立ちたい」気持ちの比重が大きい人が3割強もあることに、個人的に驚きました。ほとんどの方が「人に迷惑をかけたくない」を選ぶと思ったからです。なんらかの経験にもとづく結果なのか、とても興味深いです。

人に迷惑をかけたくなくて苦しんだ経験から気づいたこと

「人に迷惑をかけたくない」という思いによる幸福度の低下は、私も障がいをもって直面したので、この場をお借りして経験談を書きたいと思います。

多くの日本人が、幼いころから「人に迷惑をかけてはいけない」という考えを家庭でも学校でも教わっていると思います。私もその一人ですのでこの考え方が強く深く根付いていました。そして、実は障がいをもった時に一番苦しんだのが、この考え方に囚われていた期間でした。その時、私は不幸だったと思います。

障がいや持病をもつと、どんなに精一杯頑張っても、どうしても他者のサポートが必要になる場面があったり、少なからず周囲の人々にご心配をおかけすることがあります。元々人に頼ることが下手で自尊感情(自分を大切に思う気持ち)も低かった私は、何かあるたびに自分を責め、生きている資格がないのではないかと自分を否定し続ける毎日でした。本当に苦しい時間でした。

それでも日々は過ぎていきます。自己否定の感情に囚われながらも、家族や友人との付き合いや仕事を通して、自分以外の誰かのことを考えて行動していると、まだ私にも人の役に立てることがあることに気づき、少しずつ気持ちが楽になっていきました。

障がいをもって半年が過ぎたころにふと、障がいをもつ以前の自分もけして一人で生きていたわけでなく、周りの人に支えられて生きてきたのに、それが見えていなかっただけなんだと気づきました。その瞬間、言葉にできない感謝の気持ちが湧き上がり、見えなかったことが見えたこと、気づけたこと自体への喜びに包まれて、徐々に自尊感情も高まりました。

「人に迷惑をかけたくない」と思い過ぎず自己否定を手放して、自尊感情が高まったことは、障がいをもったから得られた幸福だと感じています。

人生100年時代、障がいや持病をもって生きることは多くの人が通る道と言えます。その時、自分を否定せずに、周りの人々への想いやこれまで自分が歩んできた道に思いをはせると、それまでとはまた違った幸せに気づけて苦しみの一部が和らぐことがあると思い出していただければ幸いです。

最後に、私が自己否定の感情に囚われていた時期に、生きる勇気をもらい前向きな気持ちになれた、有名な詩を皆さんに贈ります。

花  工藤直子

わたしは

わたしの人生から

出ていくことはできない

ならば ここに

花を植えよう

工藤直子著. 工藤直子詩集. 角川春樹事務所, 2002,

【調査概要】

■調査名:「障がい・持病について」についての調査

■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員 20-80代男女 855名

■調査手法:LINEによるアンケート調査

■調査期間:2023年12月

プロフィール
研究員
岡本 尚子
バブルの残り香漂う時代に定時退勤死守の銀座OLとして社会人生活をスタート。人を喜ばせる仕事をしたい、と一念発起して化粧品メーカーの美容部員へ転身後、広告会社に移り化粧品関連の案件を担当。現在はCRMプランナーに着地。さらに45歳で車椅子ユーザーとなり世の中の見え方が劇的変化。多用な人生経験を活かして人々の幸せづくりに貢献します!