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2024.02.09

健康寿命後の生活を彩る準備、できていますか?

身体的、社会的制限が増えていく中で

「自分のことが自分でできなくなったら、生きていてもしょうがない」から、100歳まで生きたくないと考える方が私たち100年生活者研究所の運営するカフェ『かたりば』にいらっしゃいました。

近々90歳になる私の祖母は、実感を伴いながらも似たようなことをよく言います。彼女は脚が悪く、一人で外出は困難です。白内障で視界がぼやけていて、出来ることが制限されています。高齢のため、その手術も出来ません。また、親しい友達が亡くなっていく中でおしゃべりできる相手も減ってきているようです。

そのような祖母の姿を見て、孫の立場から「今後の祖母の人生に対して何をしてあげられるのか?」「将来自分が祖母のような状態になることに備えて何ができるのか?」を明らかにしたいと思い、みなさまのお知恵をお借りしてこの記事を執筆いたしました。

健康寿命後の生活は自分事?他人事?

そもそも自分が将来的に、健康寿命後も生きる(体、心、社会的繋がりのいずれかが不自由になる)可能性を考えたことがある方はどの程度いるのでしょうか?

【健康寿命後の生活の可能性】

「よく考える」に「たまに考える」の割合を加えると、約7割の人が健康寿命後の生活を自分にも訪れ得ることとして捉えていることがわかりました。

健康寿命後の生活って何が不安?

また、健康寿命後の生活についてどの程度不安に感じるかをお伺いしたところ、「不安」「やや不安」を合わせると約8割もの方が不安と感じていらっしゃいます。(対象者:20-80代男女 837名)

【健康寿命後の生活への不安度合い】

次に、不安の解像度を上げるために、「不安」「やや不安」とお答えいただいた人に対して、どのようなことを不安に感じているかをお伺いしました。

【健康寿命後の生活の不安要素】

その結果、冒頭に述べた100歳まで生きたくない理由と近い「日常生活を自立して送れなくなることによる精神的苦痛」が71%と1位。次に身体的不自由や精神的疾患による苦痛が続きました。(対象者:20-80代男女 687名)

そしてこれら”自身のネガティブ要素”と並ぶのが、「日常生活を自立して送れなくなることで家族や友人に負担をかけること」という周囲への罪悪感です。

そしてそこから20ptほど下がって、「自分が楽しめる趣味や娯楽が減ること」、さらに20pt下がって「人と何かをする機会が減ること」といった、生きていくうえでのポジティブ要素の減少に対する不安が続きます。

意外にも「遺産や死後の手続きなどで家族や友人に負担をかけること」は最も少ない 結果となりました。終活の概念が世に定着していく中で、何かしら対策を既に検討している人が多いからかもしれません。

不安の種類ごとに対策傾向は異なる

次に、健康寿命後の生活に関する各不安要素のために何らかの対処或いは検討をしているかを伺いました。いずれにもチェックをつけなかった人は約3割にとどまり、多くの人が何かしらの対処をしていることがわかりました。

【健康寿命後の生活の不安要素への対処】

一方で、「ポジティブ要素の少なさ」への対処・検討割合が他の要素と比べて比較的低いことも気になりました。

その理由として、「自分が直面するネガティブ要素の多さ」や「家族や友人への負担」と比較して当事者以外からは気づきにくく、自分の将来に起こりうることとしてリアルに想像しづらいため、個人で考えられる対策が少ないのではないかと考えました。

健康寿命後の「ポジティブ要素の少なさ」に対して何ができるのか?

そこで、例として冒頭に述べた私の祖母のような状態になったとして、どのようにポジティブ要素の減少に対処していくかのアイディアを募集いたしました。皆様のおかげで沢山のアイディアが集まりましたので、下記にシェアさせていただきます。想像するだけで辛くなる方もいらっしゃるセンシティブな質問にお答えいただきまして、本当にありがとうございます。

①「一人で自由に外出できなくなってしまった場合」

1. 創造的・芸術的活動

  • 手芸、裁縫、貼り絵、金継ぎ、ビーズアクセサリーなどハンドメイド作品の作成

  • 音楽・演奏、絵を描く、歌を歌う

  • 俳句や短歌を作る、エッセイを書く、文章を書く

2. 自然との触れ合い

  • 庭で椅子に座り自然を感じる、ガーデニング・家庭菜園

  • 窓の外を見て自然の移り変わりや美しさを感じる

  • 猫と転寝をする、動物を飼う

3. 学習・精神的探求

  • 哲学や芸術などの精神的探索

  • 外国語学習

  • PCを活用し起業、大学院卒業

4. デジタルコミュニケーション・仮想体験

  • SNSでの交流、テレビ電話、バーチャル空間での交流

  • 動画配信・VRなどの通信技術を用いて外出気分を味わう

  • 推し活

5. メディア・娯楽

  • TV・ドラマ・映画鑑賞

  • 麻雀、懸賞応募

6. 社会的・地域活動

  • 施設での交流、幅広い世代との交流

  • ボランティア

  • 株や為替を扱い、社会との繋がりを保つ

7. 家庭・個人の思い出

  • アルバムや子供の成長記録を見て子育ての日々を振り返る

  • 文通

8. 体験・探索

  • 介護付き旅行、電動カートで散策

  • お取り寄せグルメを楽しむ、料理を作る

9.心の持ち方

  • 出来ないことを諦める勇気を持つ、出来る範囲で楽しみを見つける

  • 日ごろから感謝の心を持つ

  • 日常の中の「良かった」探しをする

  • 一日一日を熟慮して大切に過ごす

  • (読書などをして)喜怒哀楽を絶やさない

  • 新しいことに挑戦して刺激をうける

10.事前準備

  • 自由に外出できない状態を補える環境にする(住宅環境など)

  • 近所のコンビニのご飯に慣れておく

  • 免許返納後を見据えて公共交通機関を調べる

  • 静的な趣味を探す

②目が見えにくくなってしまった場合

手術をする、という方が多かったですが、その他にも下記の様な回答をいただきました。(①と重複するものは除く)

1.感覚的体験

  • 海や雨など自然の音を聞く

  • 花の香りをかぐ

  • 音質の良いイヤホンで音楽鑑賞

  • 自分に合った香水を作る

  • おいしいものを食べる

2.リラクゼーション・健康

  • マッサージや足つぼに行く

  • ストレッチなど目が見えにくくても出来る運動をする

  • 音声でできる健康体操に参加

  • よく眠る

3.教育・学習

  • 点字を学ぶ

  • ニュース解説を聞く

  • 聴く読書

4.社交・コミュニケーション

  • おしゃべり

  • 音声入力などでSNS発信をする

  • 小さな子供と遊ぶボランティアに参加

5.エンターテイメント

  • ラジオ・ポッドキャストを聞く

  • 落語・お笑いを楽しむ

  • テレビを複数回視聴して理解

6.創造的活動

  • 陶芸

③親しい友人などが減り、話し相手や遊び相手がいなくなってしまった場合

(①②と重複するものは除く)

1.社交・コミュニケーション

  • 家族と会話をして楽しかった日々を思い返す

  • ネットで(世代や国境を越えた)繋がりを増やす

  • 行きつけのごはん屋さんをつくり社会との繋がりを作る

  • 懸賞を通して企業との繋がりを持つ

  • 地域のサークルに参加する

  • 話し相手になるロボットを買う

2.個人的趣味・創造的活動

  • 植物を育てる

  • 空想を広げる

  • パン・お菓子を作る

  • 写真を撮る

  • お月見など季節の行事に勤しむ

3.リラクゼーション・健康維持

  • 一人の時間を静かに丁寧に過ごす

  • ホットヨガに行く

4.学習・情報収集

  • 図書館に通う

  • アンケートに回答する(ありがとうございます)

5.ビジネス・経済活動

  • 働ける限りは働く

  • ネットショップを開く

6.事前準備

  • 一人で過ごす時間を意識的に作り、おひとり様活動を推進する

さいごに

沢山のアイディアをお寄せいただきましたこと、重ねてお礼申し上げます。(掲載しきれない素敵なものも多数ございました)

上記のアイディアの中には、今まさに健康寿命後の生活を送っている方にとっても、将来的にそうなる方にとっても活用できるものが数多くあったかと思います。ご自身の生活に取り入れていただいたり、周囲に健康寿命後の生活で悩んでいる方がいらっしゃったらその方への提案に活用したりしていただけますと幸いです。私も早速祖母に報告しに行こうと思います。

【調査概要】

■調査名:「健康寿命の後」に関する調査

■調査対象者:100年生活研究所 LINE会員 20-80代男女 876名

■調査手法:LINEによるアンケート調査

■調査期間:2024年1月

プロフィール
研究員
宮本 祐帆
2020年に博報堂入社。現在はダイレクト領域のプラニングや、新規事業開発に従事しています。生き続けることをノルマではなく、素直に喜ばしいことと思える社会にしたいと思って活動しています。