1日の水分摂取量を増やしたグループは、気分評価がポジティブに
1日の水分摂取量の目安は、1.2Lから2.5L
ナタリー・プロスらの研究チームは、被験者52名(成人男性11名、成人女性41名)を1日2L以上の水を飲む「よく飲むグループ」と、1日1.2Lほどしか水を飲まない「あまり飲まないグループ」に分類。それぞれのグループに対して、1日に飲む水の量を増減させて、気分や感覚に及ぼす影響を調べました。
6日間の調査期間中は、発汗や他の摂取物による利尿作用なども考慮して、激しい運動や喫煙、カフェイン飲料(コーヒーなど)、アルコール、市販薬などの量を制限。さらに研究センターに滞在して1日5回の気分評価(口の渇き、眠気、感情の安定性、今の気分など)をしてもらったそうです。
1~2日目は、「よく飲むグループ」に1日2.5 L、「あまり飲まないグループ」に1日1 Lのナチュラルミネラルウォーターを提供。
3~5日目には、「よく飲むグループ」は1日1Lに減らされ、「あまり飲まないグループ」は1日2.5Lに増やされました。
研究の結果、普段通りの水分量を摂取できた1~2日目は両グループの気分が同等であったのに対して、水分摂取量が増加・減少した3~5日目は、両グループに変化が見られました。1日の水分摂取量を増やしたことで、「『あまり飲まないグループ』の気分が著しく改善」(Prossら、2014)。具体的には疲労感や眠気の減少が見られました。
いっぽう1日の水分摂取量を減らした「よく飲むグループ」は、「水分摂取の制限が気分にネガティブな影響を及ぼし、喉が渇きやすくなる、落ち着きがなくなる、満足感がなくなる、活力がなくなる、ポジティブな感情が減少する」(Prossら、2014)などの傾向が見られました。
研究チームは「個人の習慣的な水分摂取量の増減が気分や感覚に影響を与えることを示唆している」(Prossら、2014)としながらも、以下の点にも留意するよう付け加えています。
3~5日目の水分摂取プログラムはやや人為的であった
若年成人の身体的・知的活動が制限されたことで気分にマイナスの影響を及ぼした可能性がある
「よく飲むグループ」は女性のみのグループであり、女性は男性よりも脱水の影響に敏感であることにも留意が必要
より制限の少ない水分摂取プログラムや、より魅力的な1日の活動スケジュールを用いて、水分摂取量の変化の影響をより正確に評価できるよう、さらなる研究が必要
この研究は、フランス人を対象に行われたものであることと、調査目的が「水分摂取量の変化が気分および感覚に及ぼす影響」であるため、具体的に1日何L飲むべきかについては言及していません。
日本では厚生労働省の指針として、「1日の水分摂取量は2.5L必要」とされています。そして2.5Lの内訳は「食事1L、体内で作られる水0.3L、飲み水1.2L」となっているため、飲み水の量だけを見ると、同研究の「あまり飲まないグループ」と同等です。
この研究結果を参考にすると、1日1.2Lを最低ラインとしつつ、水分摂取量を2.5Lまで増やすことで、気分改善の効果が期待できると言えそうです。逆に、1日の水分摂取量が1.2Lより少ないと思う人は、水分をもっととるようにすると気分がよくなるかもしれません。1日の水分摂取量を意識してみるだけで、毎日をウェルビーイングに気分よく過ごせるなら、試してみる価値がありそうです。
クレジット
引用論文: Nathalie Pross, Agnès Demazières, Nicolas Girard, Romain Barnouin, Déborah Metzger, Alexis Klein, Erica Perrier, Isabelle Guelinckx: Effects of Changes in Water Intake on Mood of High and Low Drinkers(2014、https://doi.org/10.1371/journal.pone.0094754)