2023.08.28

ウェルビーイング図鑑 Vol.04 ポジティブに何でも楽しく取り組むこと

茶川正行さん(73歳)にとっての「ウェルビーイング」
PROFILE
お名前:茶川正行さん
年齢:73歳
居住地:栃木県
家族構成:妻、子供2名(独立)
職業:元々はプログラマー。現在は介護士、スマホの楽校、終活アドバイザー
趣味:居合道、国際交流、旅行など多岐にわたる

普段の生活

毎日用事があることが健康の秘訣!

茶川さんのご活動は多岐にわたり、日々大忙し。毎朝5時に起床しインターネットでネットサーフィンや調べもの等をした後、木刀で素振りをすることから始まります。ほぼ毎日スポーツクラブでプールに筋トレ、サウナやお風呂を楽しまれる他、一昨年資格取得した介護士として週2回ほどお仕事に行かれたり、街の助成事業として起案した「スマホの楽校」で校長としてスマホの使い方をレクチャーするなど、毎日暇な時間など全くないといっても過言ではないほどアクティブに過ごされています。このような生活スタイルは、会社リタイア後から続けているそうです。

ウェルビーイングの構成要素

充実した生活を送る茶川さん。とてもポジティブでプラス思考でいらっしゃるのが印象的で、お話をお伺いすると生活を構成する要素「食」「運動」「仕事」「スマホの楽校」「友人関係」「家族」など…ほとんどが茶川さんのウェルビーイングによい影響をもたらしていることがわかりました。また、茶川さんは、心の重荷となるペインとも上手く付き合えており、日々の生活では“ストレスに感じることはない“という現代人からは驚きの回答が。

では、茶川さんのポジティブ思考はどのように形作られているのでしょうか? 以下ではお話を聞いた私たちなりに「ポジティブでいられるためのポイント」を整理しポジティブ思考がウェルビーイングにもたらす影響を考えてみました。

ポジティブ10か条

1. 趣味や用事をたくさんつくる

冒頭にもお話をした通り、茶川さんの暮らしは、ジムでの運動、お風呂やサウナ、介護士の仕事、スマホの楽校の講師、剣道や居合道、ピアノ、旅行など数多くの趣味や用事にあふれており、暇な時間がほとんどありません。このように、趣味に没頭し、人と交流する楽しい用事がたくさんあること自体が、孤独や退屈さを回避し、結果として茶川さんのポジティブを下支えしているように感じました。

2. 楽しいことも、心配なことも念入りに準備する

茶川さんが多岐にわたる趣味や用事を持つようになったきっかけには、リタイア前の会社研修で「リタイア後は10以上の趣味をつくれ」と教わったということがあります。 ピアノはその言葉を受け50歳過ぎてから公開講座へ申し込み始めてみた趣味のひとつですが、リタイア後を意識した行動は趣味にとどまらず、人間関係作りや家族との向き合い方にも表れていました。例えば、40代からはなるべく町内のイベントや会合にも顔を出し、会社以外のコミュニティでの関係作りに努めてきたり、奥様の介護を見据えて2年前には介護士の資格を取得し、実践的に介護を学び始めました。10年先、20年先を見据え、自ら準備を進めてきたからこそ、ポジティブに今や将来をとらえることができるのではないかと感じました。

3. 世間一般の価値観ではなく「自分軸での楽しさ」で動いてよいのだというマインドセット

工学部を卒業しプログラマーとして働いていた茶川さん。高度経済成長期のなかでは恐らく多くの会社員が「会社の利益となること」「会社で昇進すること」を目指し行動してきたなかで茶川さんはそういった目標よりも自分軸の楽しさ起点でキャリアを選択し、同時に仕事をしつつもリタイア後の生活のことをいち早く視野にいれていたといいます。印象的なエピソードとしては、なんと7回も(!)自ら手を挙げ出向されたというお話がありました。

4. 合わなかったらすぐやめる、軽やかさを身に着ける

「石の上にも三年」ということわざがあるように、物事を始めたらすぐにやめるのは恥ずかしいという考えは古くから根強い考え方でした。 しかし、茶川さんは、仕事もリタイアし子どもも独立した今だからこそ、そのような考え方にとらわれず「合わなかったらすぐやめる」というスタンスでいらっしゃいます。大事なのは始めてみること、年を重ねた世代こそ、軽やかに選択すべきだというお気持ちが伝わってきました。

5. 誰かのためも、まずは自分が楽しむ姿勢で

茶川さんが校長を務めるスマホの楽校※注は、地域のシニアの方々にワンコインで、タブレット端末やスマホの使い方をレクチャーする講座です。みんなで集まり楽しみながらスマホに触れていると、認知症予防になるだけでなく、新しい趣味・つながりの仲間ができるそうです。また、終活アドバイザーとして終末医療に関する意思表示やエンディングノート、お別れムービーの制作などのサポートもされています。誰かを手助けする活動ですが、茶川さんご自身が楽しんで取組み、誰かの役に立つことでさらに茶川さんも元気になっているようでした。

※注:スマホの楽校は、楽しく学ぶという意味で「楽」校という表記をされています。

6. 人生100年スパンでゴールを設計する

リタイアは第二の人生の始まり。人生の残りが半分切った、という気持ちではなく、残る10年、20年をどのように活用しようかという前向きにとらえることで、新たな目標、挑戦が生まれるのです。茶川さんは最年長で介護士の資格を取得しましたが、今後も「90歳代で最年長で居合道七段を取得する」という目標や「50歳からはじめたピアノも「10年後にジャズピアニストになる」というゴールを目指して日々鍛錬を続けていくようです。

7. 死ぬまで・死後もかっこいい自分をプロデュース

茶川さんにはご自身の理想像があります。それは、ご家族やお孫さんから見て「かっこいいおじいちゃん」でいること。そのために、遺影やお別れムービーは定期的に撮り直したり、「おやじの味」といわれるものがほしいからそば打ちをはじめたそうです。理想の自分を描きプロデュースできていることも、きっとポジティブさにつながっているのではないでしょうか。

8. 欲に素直に

運動や食事など健康に気を使われている茶川さんですが、実はお酒が大好き。控えめにしなければ…と思いつつも「毎日お酒が飲めるのは健康の証」「お酒の瓶を見ると幸せになる」とおっしゃいます。全て健康のために犠牲にするのではなく、しっかり心の声に従って楽しむこともポジティブでいるためには大切そうです。

9. 受けながす

介護士として働かれる中では、疑問に思うことや人間関係に悩むこともあるとおっしゃいますが、時には聞こえないふりをしたり、相手のいい側面を見るようにして嫌なことを意識しないようにしているそうです。

10. 自ら、愛する

茶川さんはシニアになってからも、おしゃれに気を配っています。 それは、かっこいい自分であるために、ということと同時に、奥様、また周りのすべての女性を異性としてしっかり意識しているからこその行動でもあります。おしゃれをして、深い愛を注げる相手がいること、そのこともポジティブさを支えているのかもしれません。

ポジティブに何でも楽しく取り組むこと

茶川さんのウェルビーイングの形について

茶川さんのお話をお伺い、印象的だった点が3つありました。 1点目は、100年スパン、さらには死後まで見据えて行動されている点です。 ひと昔前であれば、リタイア後=人生のエンディングまでのカウントダウンという印象もありましたが、長寿命化の中でその考え方も大きな転換を迎えています。茶川さんのように“人生はまだ30年、40年ある!まだまだ自分には隠れた才能や、出来ることがある!”というマインドセットでリタイアを迎えられるかどうかで、その後の過ごし方は大きく変わるのではないでしょうか。一方でそういったマインドセットを30代、40代のころから持って人生設計をできている人はまだ少ないかもしれません。官民関わらずそういった考え方が当たり前になるようなサポートやリカレント教育が普及するといいなと思いました。

また、遺された人にどのように記憶してもらいたいかを意識し行動されているのも、今の新しい動きと感じました。 かつては、終末期医療のありかたを当人と家族間で相談することも多くありませんでしたが、生前に家族と確認する等、死について本人も、家族も語る機会が増えたように感じます。変化の背景には、ネットで様々な事例の情報を簡単に入手できるようになったことや、動画等で簡単に自分の意思を記録として残すことができるようになったことも影響しているのかもしれません。

2点目は、ゴールや目標の設定の仕方を若いころから変える柔軟性をお持ちだったことです。 若い頃に設定するゴールは1番となることや、いかに早く目標に到達できるかがものさしになることが多いように感じます。しかし、心身ともに大きく変化をするなかで自分を評価する指標を変えることで、ありのまま自分自身を認めることができるようになっています。茶川さんでいうと(長く続けて)最年長で資格をとることや10年後にピアニストになりたい、と今の茶川さんのものさしで目標を設定することで前向きに物事に取り組めているのではないでしょうか。

3点目は、いわゆる社会貢献活動も、“人のため”よりも、“まず自分が楽しむ”姿勢が大切であること。 社会貢献活動を始める際には、それは本当に人のため社会のためになるのだろうか?と大きな視点で考えてしまい、一歩踏み出すことに躊躇してしまうこともあるかもしれません。スマホの楽校の校長をされる茶川さんを思い浮かべると、そんなときにまず自分自身がやりたいか、楽しめるかと視点で判断することで挑戦しやすくなるのかも、と思い勇気づけられました。

取材協力:趣味人倶楽部:会員35万人・月間3000万PV、日本最大級のシニア向けコミュニティサービスです。定年退職や子育て卒業後、同世代と繋がったり、趣味を深めるために利用しています。オースタンス:オースタンスは、シニアDXを推進するスタートアップ企業です。 ITを活用し、中高年・シニア世代に、ポジティブな変化を生み出し、 エイジングエネルギー溢れる社会をつくっていきます。

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Well-being Matrix
Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。