2023.08.28

ウェルビーイング図鑑 Vol.05 つながりからやりがいまで、PCとネットは大好きな場所

南湘子さん(67歳)にとっての「ウェルビーイング」
PROFILE
お名前:南湘子さん
年齢:67歳
居住地:神奈川県
家族構成:夫、子供3名(独立)
職業:専業主婦
趣味:読書、SNS、旅行等

普段の生活

毎日決まったスケジュール通りに過ごすことが、ウェルビーイングのポイントに。

南湘子さんの日常は下の図をご覧の通り、分刻みで様々なタスクをこなしています。夜もここまで細かくはないですが、こなすことの順番や時間は変わらない毎日を過ごされていました。なぜこのように過ごされているのかについて伺ったところ、「サイクルで自分で動かないと、体が逆に疲れてしまう。リズムに乗ったほうが自然に行動できる」とのことでした。家事など毎日行うルーティンのものは、やる時間や順番をあらかじめ決めておき、その通りにこなす方が負担にならず、ウェルビーイングにおいても大事であることがわかりました。 ルーティンを時間通りにこなすだけでなく、時間を守ることを大事にしている湘子さん。 「時間はとても大事。相手の時間を使うことなのでそれは申し訳ない。自分が待つのは平気だけど待たせるのはストレス。私のために時間を使わせくない。」その理由はお父様が国鉄職員であることも影響しているようです。「父は国鉄職員で時間に厳しかった。例えば10時に家を出るとすると10時までに用意をすましとけばいいと普通は思うが、父は9時半には準備ができていた。」湘子さんにとって時間はよりよく過ごすための規範のひとつになっているようです。

ウェルビーイングの構成要素-PC・ネットが湘子さんのウェルビーイングのインフラに-

湘子さんのウェルビーイングについてお話を伺うと、社会的役割や体調管理、人とのつながり等、その多くにおいてPCやネットを活用されていることがわかりました。今回は湘子さんのウェルビーイングとPC・ネットがどのようにかかわっているかを中心にご紹介します。

前提:湘子さんとPC/インターネットとの付き合いは90年代から 「PCを触っている時間が大好き」という湘子さん。毎日朝から晩まで様々な用途で活用しています。PCを使用し始めたのは90年代後半から。ネットに入るようになって四半世紀も経つそうです。ではどのようにPC/ネットを活用していて、どのようにウェルビーイングに寄与しているのか、具体的に見ていきましょう。

1. つながりを作る・維持するために掲示板・SNSを活用

90年代後半のネット黎明期から掲示板等で交流してきた湘子さん。その当時流行していたチャットルームを利用して同じ地元の人と友達なってチャットを楽しみ、仲良くなったらオフ会(リアルにあう会)も行いました。ネットは男女や年齢の差を感じないところが魅力。「ハンドル名で知り合うため、性年代関係なく人対人の付き合いができることが魅力で、すごく楽しかった」。いまだに当時の友達とは交流があるそうです。 現在新しい人との出会いはあまりないものの、コロナ禍であまり会えない友人とSNSでグループを作り、毎日スタンプ等で会話しています。その他にも趣味人倶楽部等、複数のブログをチェックするのが日課となっています。SNSは自分の状況を伝えたり、友人・親族の状況をチェックするツールになっており、コロナ後その役割は大きくなっています。 今後歳を取るほどネットでのつながりが重要になってくる、と湘子さん。「歳を取ると外に出かける体力が少なくなる。いま運営しているグループメンバーの多くは私より年上。身近な友達がいなくなり、将来自分ひとり残される可能性が高いので、新しいつながりを探したい。ネット上のつながりだけでもいいのかも。」

2. エクセルで健康管理

湘子さんは狭心症と甲状腺の調子が悪い為、医師から痩せるように言われたのがきっかけで、3年前から毎日血圧と体重を記録しています。記録は体重が上下する理由について(食べ過ぎた?運動不足なのかな、等)考えるきっかけになったそうです。毎日体重計に乗ることが楽しくなり、3年間で14kgのダイエットに成功。現在も「50kgの壁」という目標を設け記録し続けています。記録・管理にExcelを活用、毎日の体重と血圧を票とグラフで管理しています。ウェルビーイングの大きな柱である体調の管理を行う上でデジタルツールが不可欠なものになっています。

3. PCやネットを教えることがライフワークに

湘子さんは2000年から、高齢者や障害を抱えている方にパソコンを教えるボランティアを続けています。一番多い時は週3-4回ほど行っていました。教えている方が病気でつらいお別れをしたのがきっかけに、新しい人を教えることはなくなりましたが、今でも週1で教えています。前述したLINEグループについても、メンバーがスタンプのやり方や使い方に困ったとき時、まず湘子さんに相談がくるそうです。「頼られるのはうれしい」というコメントの通り、PCボランティアや友人に教えるのは彼女にとって役割を発揮できる一つの場になっていそうです。

4. ゲーム・ブログが心の避難場所に

朝のルーティンになっているスマホゲームは、甥っ子からSNSで誘われて始めたそうです。SNSの友人グループの間でもそのゲームは、ハートのやり取りをしていてやめるにやめられなくなったそうです。ゲームは楽しむ場でもありながら逃げ込む場でもあると湘子さん。「ゲームをやっている時は頭の中が真っ白になっているから、嫌なことがあったり何もしたくない時に逃げ込む先になっている気もしないでもない。」 親族や夫とのやりとりで嫌になってしまったとき、ご自身のブログに心情を吐露することも。「自分の気持ちを整理しながら書けるし、自分のモヤモヤを、わかってくれる人が何人かいるとホッとする。」リアルな素性が解っている友人には話しにくいこともハンドルネームのみのネット上のつながりであれば本音をシェアしやすく、心の避難場所になっているのだと思いました。

インターネットの負の側面

約四半世紀にわたってネット上で交流を続けてきた湘子さん。ネット上での人付き合いが昔と比べて変化してきている点もシェアしてくださいました。昔は限られた人しかネットに入ってこなかったので男女や年齢関わらず、人対人の付き合いができるメリットが大きかったのですが、時が経ち様々な人がネットに入ってきて状況は変化したそうです。「いろんな人がネットに入り、悪用する人も増えてきた。昔は自分のことをたくさん話してきたが、今はリアルでも会える人と、ネットでしか会えない人とで話す内容を分けている。」恐ろしいことにネットストーカーに遭ったことも。湘子さんが参加されているコミュニティに現れ、ご自身だけでなく湘子さんのお友達にも危害ともいえるようなコメントをしたそうです。結果湘子さんは、女性専用のもの以外全てのコミュニティを退会しました。 若い年代(特に女性)においてネットストーカーのニュースは後を絶ちませんが、湘子さんの年代の方でもこのような被害に遭われることを聞いてとても驚きました。近い将来ネットを活用する高齢者が増えるほど、このようなトラブルも増えていくのと、ネットでの人間関係がウェルビーイングに大きな負の影響を及ぼす可能性も増えていくことが予想されます。

つながりからやりがいまで、PCとネットは大好きな場所

湘子さんのウェルビーイングの形について

ネットが大切な人との交流や新しい出会いが生まれる 「つながりの拠り所」になる

湘子さんのネット活用で特徴的だったのはインターネットがきっかけでつながりを維持・拡大しているという点でした。また湘子さんが年齢を重ね、体力が落ちて自由に出かけるのが難しくなった時、関係性の維持や新たな出会いを作るためにネットは不可欠になっていくだろうとおっしゃっていました。 様々な理論において家族・親族や友人などの関係性を良好に維持する「人間関係の資産」はウェルビーイングを築く上で重要な要素になっています。大崎博子さん(@hiroloosaki)は89歳のツイッタラーで、日常の出来事や日々思っていることをつぶやき、現在フォロワーが14万人います。フォロワーとつながり交流していることが彼女にとっての財産であり生き甲斐なのだそうです。 ネットストーキング等トラブルを起こす可能性がありえども、性年代関係なく人対人の付き合いができるという点や、距離や空間を超えられるという点でも高齢者にとって魅力的です。ネット上に拠り所を作ることは、人生100年時代の関係性ウェルビーイングを構築するうえで重要だと思います。

デジタルとネットが近い将来、シニアの生活インフラになる。

湘子さんはネット黎明期よりネットやデジタルを使いこなしてきた、シニアの中でもデジタルイノベーターです。彼女にとってデジタルやネットは毎日の健康管理やコロナ禍での友人関係の維持、つらい気持ちの吐き出し場所まで彼女の毎日を支えています。コロナ禍より、インターネットやスマホは、キャッシュレス決済が衛生的に買い物を行う手段になるなど、生活を守るツールになりつつありますし、その傾向は今後も強まるでしょう。2020年におけるインターネット使用率は、60代:83%、70代:60%ですが、80代以上は26%しかネットにつながっていません*。コロナや3G停波によるスマホ化等、デジタル化の波が急激に押し寄せている中、湘子さんのようにデジタルやネットがシニア層のインフラになる日はすぐそこまで来ているような気がします。

*総務省「通信利用動向調査」
取材協力:趣味人倶楽部:会員35万人・月間3000万PV、日本最大級のシニア向けコミュニティサービスです。定年退職や子育て卒業後、同世代と繋がったり、趣味を深めるために利用しています。オースタンス:オースタンスは、シニアDXを推進するスタートアップ企業です。 ITを活用し、中高年・シニア世代に、ポジティブな変化を生み出し、 エイジングエネルギー溢れる社会をつくっていきます。

プロフィール
Well-being Matrix
Well-being Matrix編集部
人生100年時代の"しあわせのヒント"を発信する編集部。